私は母の地元では『授かり様』と呼ばれている。
私の母の実家はお寺で、三歳くらいまでは母の実家で暮らしてた。
うちのお寺は『癇(かん)の虫まじない』がよく効くと評判で、小さな子をつれた家族がよく来る。
当時、年頃が近い一歳ちょっとの私を祖母が檀家さんのお孫さんと会わせようと、客間に連れていった。
そのお母さんは年子でふたりめ妊娠中なんだけど、予定日が過ぎてて困っていたらしい。
私は相手の子と座って遊んでたらしいが、急に相手のお母さんのお腹を撫でてお母さんの横で遊び続け、別れ際も撫でた。
次の日、その檀家さんから連絡があって、あのあとすぐに陣痛がきて無事に産まれたらしい。
その後、庭先で遊んでた私は訪れたお嫁さんのお腹を撫で、その日はずっとその人から離れようとせず、母に引き剥がされるまで何度もなで続けたらしい。
その後そのお嫁さんは妊娠した。
そんな事が一年続いた頃には周りも「なんか不思議ねぇ」と噂しはじめたんだけど、尋ねてきた檀家さんをお出迎えした私はお嫁さんのお腹に抱き付き「あかちゃんいーこ!」といい撫でたらしい。
そしてお嫁さんは「妊娠した」と、後日号泣して私を抱きしめてお礼を言った。(これはなんとなく覚えている)
流産繰り返してて、今回もダメかも知れない・・・と、諦めてたが無事に安定期に入り、今まであった安産妊娠などの出来事は偶然じゃなくて、私がきっと関係してる、私のお陰だと家族総出でお礼をしに来たらしい。
お寺を離れた三歳からは長期休みにしか戻らなかったし、十歳の頃、隣の家の幼なじみの牛の鈴が難産で私が頭を撫でてやったらすぐに破水し、無事出産したのを最後にその不思議な力は無くなった。(長期休みのときはずっと縁側に座ったり寝たりしてて、ふときになった人の元に行きお腹やこしを撫でてた。)
三十路になった今でも祖父母のとこに帰れば檀家さんには『授かり様』と呼ばれ、手を握られるし、その時産まれた子にもお礼を言われたり、未だに私宛にお年賀や暑中見舞いなど送られてくる。
どんな力なのかはわからない。
本当に自然とその人のお腹回りに引き付けられるような感覚で手を伸ばすのを我慢ができなかった。
あれが一体なんだったのかはわからないが、もっとわからないのは何故私は三人子供産んだけど、全員切迫早産や重度の悪阻や早産、出産時の出血多量で決して楽な出産では無かったことが解せない・・・。