私、こんなお仕事してます

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

怖い話ではないです。
当方の話もひとつ、ひまつぶしにお付き合いください。
守秘義務あるのでおおざっぱですがw

当方は警察のお手伝いをしている民間通訳人です。
外国人の容疑者が逮捕されたときには、その容疑者に日本人容疑者と同じ環境を提供する為、出頭を要請され、取調、その他すべて立ち会います。

容疑者の出身国と日本ではいろいろと法律も違うので、そのあたりを説明するのも通訳人の仕事です。

警察署の留置場は一応9時には開くのですが、出すのに多少の手続きが必要なので、取調は大抵10時頃から始まります。
よって通訳人はそのちょっと前くらいに出勤。

担当の刑事さん(二人一組)とその日の取調内容について打ち合わせをします。
それが済んだら刑事さんが留置場まで容疑者を迎えに行きます。

取調室では、容疑者は一番奥の席につきます。
刑事さんが手錠をはずし、腰縄は椅子に縛り付けておきます。
お約束の「あなたには黙秘権があります。弁護士を依頼する権利があります」云々は特に最初の取調のときには必ず一通り言わなくてはなりません。

外国人容疑者の場合、大使館に通知する権利もありますので、そのことについても説明しておきます。

「身体の調子はどうか」
「食事はちゃんとできてるか」

そんな、健康状態や精神状態をひととおりチェック。
異国でパクられた容疑者にしてみれば、通訳人は自分の国の言葉が通じる貴重な話し相手ですので、ストレス解消にちょっと雑談をしたりもします。

そして取調開始。
2人の刑事のうち1人は取調担当、もう1人は補助なので、基本的に容疑者と話すのは取調担当のほうだけ。
通訳人をはさんで会話が進みます。

当方はあくまでも通訳ですので、この会話の間は刑事さんと容疑者の発言のみを忠実にリピートし続けます。

容疑者を心理的に圧迫したり、刑事さんの尋問の邪魔になったりするようなことがあってはなりませんので、どのような雰囲気のときでも平坦な口調を保ち淡々と「字幕」役に徹します。

12時になったら、昼食の為一旦留置場に戻します。
食事時間は厳守しなければなりません。
容疑者が留置場に戻って昼食をとれる状況であるときには刑事さんは見張っている必要がありませんので、通訳人と共に食べに行きます。

場合によっては留置場以外の場所で容疑者に昼食をとらせることもありますが、この場合は刑事さんたちは見張ってなきゃならないので、通訳人ひとりで外出するか、一緒にお弁当取るかします。

13時から取調再開。
その日のネタで1本調書書かなきゃならないときには、そろそろ刑事さんは少しずつまとめにかかります。
PCで打ち込みながら、細かい点を確認。
当方もPC画面をちらちら見て訳すときの要点を確認します。

書き上がったら一旦プリントアウトして、訳しながら読み上げて容疑者に聞かせてチェックしてもらいます。
細かい言い回しに気を付けつつ、一文一文忠実に訳していきます。

容疑者が「そこんとこちょっと違う」「ニュアンスが変かな」と言ったところは、どのように違うのか細かく確認して刑事さんに報告。

誤訳など絶対にやらかしてはいけないのは勿論のことですが、ちょっとした外国語と日本語との間での言い回しの差が後々問題になるようなことがあってはいけないので、この通訳には最大限気を遣います。

刑事さんは容疑者の意見を聞いて調書を修正し、また当方が容疑者に通訳して確認して、これでOKとなれば完成。
完成稿をプリントアウトしたら、容疑者、刑事さん、それに当方がそれぞれサインしてできあがりです。

17時には容疑者を留置場に帰します。
刑事さんが元通り手錠をはめて腰縄持って送っていきます。

通訳人は報酬や旅費の申請書に時間を記入してもらい、サインして印鑑押して刑事さんに提出しておしまい。

取調だけの一日は、だいたいこんなものです。

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