友人の話。
里山の麓にテントを張り、一泊した時のこと。
朝方、外に這い出した彼は目を見張った。
自分のテントを囲むように、辺り一面が赤い色に覆われている。
旗だ。
一メートルほどの竹竿に、赤く細長い布が結ばれていた。
見渡す限りの山裾が、赤黒く染められたように見える。
数え切れない赤旗がはためく中を早々に下山した。
できるだけ旗に目をやらないようにしながら・・・。
後に聞いたところ、昔あの斜面の外れには火葬場、そして葬斂場(そうれんば)と呼ばれる建物があったという。
葬斂場というのは、死者を荼毘(だび)に付する前にお経や線香を上げるための場所らしい。
火葬場は一つだけだったが、葬斂場の小屋は結構な数がその斜面に立っていた。
今はすべて朽ち果て崩れ、何も残ってはいない。
あの赤旗と何か関係があるのかは不明だ。
彼曰く、これ以上詳しく調べる気は無いという。