ある女の話。
幼少時、雑木林で遊んでいた時、友達の男の子が行方不明になったという。
女性は、その子が消える瞬間を目の辺りにしたそうだ。
男の子が、振り返って、驚いた様な表情を浮かべると、女性を指差して、「あっ・・・」と言ったきり、空気に溶けるように消えてしまった。
「でもね・・・」と、女性は言う。
女性:「子供の頃の記憶でしょう。曖昧なのよ。その記憶だけはやけに鮮明なんだけど・・・」
最近、それを思い出していろいろ調べた結果、ある事実がわかった。
彼女は養子だったそうだ。
そして、彼女の育て親は既に亡く、幼少時の女性の過去を知る人は誰もいなかった。
女性:「神隠しに遭っていたのは、私だったんじゃないかって思うの」
女性は盃を飲み干すと溜め息をついて、笑った。