高校の山岳部だったころの、夏合宿で聞いた先生の話。
むかし部員生徒連れて山登ってたんだと。
んで山頂から降りるとき、日も暮れてきたから、途中の山小屋で一泊しようということになった。
山小屋に入ると、先客が「きょうはこちらで、ご一緒になります。宜しくお願いします」と先生は挨拶した。
壁に寄りかかって座っている先客は、ぺこりとお辞儀した。
それから一夜を過ごし、朝になった。
ふと目覚めると、外が騒がしい。
出てみると、ヘリやら記者やら、なにやら大勢が山小屋の外にいる。
何事かと聞くと、「ここで遭難した方の遺体を寝かしておいた。ふもとまで運べなかったから、途中の山小屋に置いて人手を呼んで、また来たんだ」と関係者が答えた。
小屋の中を見てみると、壁に寄りかかっていたはずの男が、きちんとシートを被されて寝かされている。
すでに亡くなっていたはずの先客は、確かに昨日お辞儀をした。
それを他の部員生徒も見ていたという。
新聞にも載ったらしい。
先生は、幽霊とかそういう類の話は信じないのだが、なぜかオカ体験が多い。
先生:「骨くわえた狐が足元通って、リンが燃えて人魂に見えたことはあったけど、あれはどうにも腑に落ちない」って言ってた。
もうその先生も定年で辞めちゃったけどね。