今から3年前くらいの時に俺は同級生5人でアホだから台風の日に海に遊び行ったんだ。
まず、九十九里の場所までわからんが犬吠崎の近所まで行った。
案の定、台風で海なんて入れるわけなかった。
が、当時はワルノリで「台風たしか北に向かうよな?じゃ、南いけばよくねw」という浅はかな考えで、そのまま南下し、館山のあたりまで移動した。
ビックリしたのは、なんと本当に台風を抜けられたのだ。
その日は、とりあえず素泊まりの民宿に泊まることに。
ただすぐ寝るわけもなく酔っ払ったまま「怖いところいってみない?」という話になり民宿から、とにかく車で海沿いを北上してみた。
10分くらい運転すると真っ暗な元ホテルor病院の廃墟にたどり着いた。
とりあえず、その廃墟の前に簡易型トイレ付き駐車場に車を止めてみたが、すでに仲間のうち3人は爆睡。
起きてたのは下戸で酒を飲まなかった俺と助手席のかなり酔った友達。
本当なら廃墟に入って悪さしてみたいところだが、二人ではしょうがなくやることも無いので、ボーっと廃墟の窓を見つめていた。
時間は覚えていないが5分くらい見つめたころだろうか。
急に謎の怖さに襲われ、まるで頭の中で鐘が鳴り響いたような錯覚に襲われたんだ。
表現するなら、クロックタワー2のシザーマンが近づいてきた時の鐘と音楽だ。
そのまま金縛りではないが、真っ暗な海と真っ暗な廃墟の窓を見つめ続けていた。
なぜだかわからないけど見つめ続けるしかなかった。
別に人魂が見えたわけじゃなかった。
嫌、何も見えなかったんだけどさ。
絶対にこっちを見てる奴がいたんだ、まるで絵画の自画像のようにこっちを見つめてる何かが。
不思議とそれが、あぁ女の人だなって思えたんだ。
何分それと見詰め合っていたんだろう・・・。
覚えていないんだけど、そうしてるうちにまた頭の中で鐘がなったような気がして、頭に重いおもしをのせられてスーパーマリオの残りタイム1分前の音楽のようなものが頭の中にこだました。
あれをプレイしてるような危機感が俺の中でめぐって、そのままアクセルを踏んで一気に民宿まで逃げ帰った。
今、書いてて思い出したんだが場所は館山の方で南から海沿いを北に走ってトンネルがあって、それを出たすぐ右側の廃墟。
とりあえず、その日はビビっていたが、そのあと何事も無く二日滞在した。
最後の朝、民宿で朝飯を食べる時にふと、ある違和感を感じた。
出される料理が少ない。
一人分足りないって何故か思ったんだ・・・。
それを最後の朝食の時に冗談交じりで話すと全員顔がひきつった気がした。
どうやら全員感じていたらしい。
が、朝なのもあって少し怖かったけどすぐに全員気をとりなおして、記念撮影をし何事も無く普通に帰った。
家に帰ってから1週間。
季節は7月の最後で近所の公園で小さな祭りがあり、そこで1週間ぶりに海に行った友達と会ったんだ。
小さな祭りだったので、俺らはやることもなく1週間前の海の不思議な話や、ナンパして全滅した話なんかをして盛り上がっていた。
その時に、携帯で写メをとりまくってたやつが海で撮った写真を見だしたんだ。
そいつも撮った写真を初めてそこで見たらしい。
俺は、そいつから携帯を借りて写真を見せてもらった。
そこにはたわいも無い縦埋めされて頭だけでてる写真なんかが写っていた。
ただ、最後の写真だけが気になった。
気になったていうか・・・朝飯の時に撮った写真にあきらかに女が写っていた。
しかもど真ん中・・・。
真ん中に写った男友達の肩に重なり横を向いて俺の方を向いている。
俺はビビって、すぐにそのままの状態で持ち主の友達にかえてして確認してもらったんだ。
そしたらそいつが「うわ・・・。マジだ、女がこっち見てる」と言ったので、『こっち見てる?横向いて俺の方みてんじゃん』って思った。
嫌な予感がして・・・そいつから携帯を取り上げ、また確認してみる。
本当だった・・・。
こっちを見てる。
顔の角度が変わっている・・・。
その時思ったんだ。
「ああ、廃墟の女の人だ」って。
とにかく廃墟を見つめ続けてた時と同じ目?目かわからんが同じ気配だったんだ。
それは真っ黒な服を着ていて例えるならICOってゲームの魔女みたいなやつ。
そいつは俺らが携帯を回し見をすると、それごとに若干変化していた。
さすがに怖くなって、みんなで帰ってから1週間の間になにかなかったか話しあった。
全員じゃなかったが、あいかわらず違和感を感じてる奴がいたし、写メ撮ったやつは、アニキが突然高熱が出て、おまけに『何かが』家にいる気がして怖くて一晩トイレで過ごしたらしい。
こういう話をよくTVで見ていたので、その携帯をとりあえずお祓いしてもらうことにした。
んで、祭りから1週間たった。
俺はお祓いには行かなかったんだが俺以外の奴は行ったらしい。
俺はそれを聞いて安心して過ごしてたんだ。
そんな時、自分の部屋に入るとまた違和感がした。
その違和感は自分の机の上。
なんて説明していいかわからんが俺は自分の机の上に透明なプラスチックのカバーをかけていて、それと机の間に写真を挟んでいるんだ。
そこには民宿での時じゃないけど携帯ではなく、ちゃんと普通のカメラで撮った全員の集合写真が挟んであった。
その写真がグチャグチャに滲んでたんだよ
おかしいんだ。
挟んであるから水が入るわけないんだから。
おまけにその写真、俺の顔と端っこの方のみ残してあとが全部滲んでた。
まるで、お前がターゲットと言わんばかりに俺の顔だけ丸く残して・・・。
その写真、逆光にならないように海を背にして斜めに撮ってもらったんだけど、その端っこに、廃墟が写ってたんだ。
俺は急いで写メとった友達に電話し、そいつに会って話すと背筋が凍った。
そいつ、俺が滲んだ写真を発見した日、心霊写真残ったまんまの携帯海に落としたんだって。
どういう神経してるかわからんが、あんな怖い目にあったのに釣りにいったらしい・・・。
急いでうちに帰って、湿った写真を少し舐めると塩味がした。
あとに聞いた話だがお祓いちゃんとしてたかと思ったら、神社行って、100円賽銭箱に入れて「呪わないで下さい」ってお参りしただけらしい・・・。
その後はそれ関連で何もなかったんだが、本気でコワイ思いをした。
二十数年しか生きてない俺の一番怖い話。