世界大戦で活躍した奇術師。
第二次世界大戦が始まるとマスケリンは自分の技術をカモフラージュに役立てられると考え、イギリス軍の工兵隊に参加した。
彼はテームズ川で鏡と模型を使ってドイツ軍艦のイリュージョンを作ってみせ、当初は懐疑的だった士官を納得させた。
1941年1月、アーチボルド・ウェーヴェル大将は欺瞞と防諜を目的とした部隊「Aフォース」を設立した。
ここに任命されたマスケリンは建築家、絵画修復技術者、大工、化学者、電気設計士、電気技師、画家、舞台技師など14名からなるグループを組織した。
彼等はマジックギャングという通称で呼ばれた。
マジックギャングは数多くの手品を行なった。
彼等は絵の描かれた布と合板を使ってジープを戦車のように見せかけ、キャタピラの痕跡まで偽装する一方、戦車をトラックに見せかけたりもした。
彼等は軍隊や軍艦のイリュージョンも作ってみせた。
彼の最大の手品はアレクサンドリアのスエズ運河を隠蔽してドイツ軍の爆撃機の方向を誤らせるものである。
彼はアレクサンドリアから3マイル離れた湾に夜明かり、建物、灯台、高射砲隊といったものの模型を作った。
またスエズ運河を隠すために回転する円錐状の鏡を用いて、回転する光で幅9マイルに及ぶ光の輪を作った。
1942年、マスケリンは第二次エル・アラメイン会戦に先立つバートラム作戦に参加した。
これはドイツ軍のロンメル将軍に連合軍が南から攻撃してくると思わせるためのもので、実際にはイギリス軍のモントゴメリー大将は北からの攻撃を計画していた。
北には千台もの戦車がトラックに偽装されていた。
南にはマジックギャングによって二千台の戦車の偽物が置かれていた。
偽の線路、偽の無線会話、偽の建築音まで偽装された。
偽の水用パイプラインも敷設され、攻撃が行なわれるのはずっと後であるように見せかけた。