数年前、都内の1Kのアパートに住んでいた。
家賃は相場より心ばかり安いかな程度。
引っ越した最初の晩、少し違和感を覚えた。
何か、かさこそと動いているような気配・・・。
昔、やはり一人暮らしをしていた学生時代、夜中に何かが動いているような物音で目が覚め、電気をつけてみたらGが壁から壁へ飛んで回っていたという恐怖体験をしたことがあったので、嫌々電気を点けてみた。
でも見回しても何もない。
ほっとしたものの、物陰に隠れてるかもしれない。
明日コン○ットを買ってこなきゃと思いながら寝直した。
だけど、その後もしばしば物音が。
何かを探しているような感じ?
とにかく、かさこそという音が昼間でも聞こえてくる。
ただ、気のせいと言われればそうかなという感じだったので、特に何かすることもなく日々を過ごしていた。
それがある日、外出先から帰ってくると、部屋の中から、ビニールシートぽい何かを振っているような音が聞こえてくる。
こんなはっきりした物音を聞いたのは初めてだった。
正直少し怖かったが、入らないわけにはいかない。
鍵を開けて部屋に入った。
何もなかった。
外の音が響いて中から聞こえるように感じただけかなと考えることにした。
でも、その夜。
寝ていると、また物音がする。
で、それと同時にはっきりと何かが部屋の中を動き回っている気配を感じた。
一頻り徘徊すると、俺の寝ているベッドに向かってくる。
そしてベッドの淵の所に両手をついて、体を乗り出すように覗き込んでくる。
俺は心臓が爆発しそうになりながら寝た姿勢を維持する。
でも確かに目を瞑ってるはずなのに、そいつが布団のところに両手をついて身を乗り出すようにして顔を近づけてきているのが嫌でも分かってしまう。
どれほどそうしていたのかはわからない。
一応寝付いたらしく、目覚ましの音で目を覚ました。
その後もしばしばそいつは俺を覗き込んできた。
夜中、いきなり眠りから覚めたと思うと、そいつが顔を近づけてきていたりする。
俺はそれまで心霊体験の類は全くなかった。
だけど、絶対に寝ぼけたとか見間違いだとか夢だとかじゃない。
それは絶対に断言できる。
正直、寝ているんだかいないんだか分からない状態が続いて、体の具合が悪くなっていった。
でも改めて引っ越すような金はない。
大家さんめっちゃいい人だったので、心霊現象が起きる、敷金礼金返せやゴルァともいえず・・・。
何とかしようと線香をあげてみたり数珠をつけて寝てみたり、心霊関係の本を読んで塩盛してみたり・・・。
でも効果なし。
ただ、そうして読んでいた本の中のエピソードにこんなのがあった。
確か古本屋で見た丹波○郎氏の本だったと思う。
ブッダが重病の子供を助けてくれと頼ってきた夫婦に、その子供の横で性交渉をしろと助言する。
生殖のエネルギーで悪霊を退ける?(昔は悪霊が病気の原因と考えられていた?)というような話。
でも、奥さんどころか彼女もいない魔法使いの俺には何の助言にもならんわな。
ゴーストも倒せない魔法使い。
でも、かなり参っていたので、真似事でもやるだけやってみようと考えた。
AVの動画を24時間再生し続けた。
部屋を空けているときも絶え間なく。
冗談みたいな本当の話。
怨霊、いや音量には注意したけど、木造だったので人に漏れ聞こえてたかもしれない・・・。
でも、出て行ってくれと言われれば、無様だけど実家に帰ろうかと考え始めていたので、ある意味開き直っていた。
しかし、2日半経った夜、試しにAV止めてみたが、例の音や覗き込みはなかった。
その後も結構びくつきながら就寝していたけど、結局、おかしな現象は二度と起こらなかった。
今は別のところに住んでる。
心霊現象はとりあえずあれきりだ。
この先どうかはわからないけど。