当時の上司に酒の席で聞いた興味深い話。
趣味の渓流釣りに出かけたという上司。
いつもならキャンプ場をかねたような場所で釣っているらしいんだが、今回は趣味仲間のAさんの案内で山深い秘密の場所とやらへ向かうことになった。
山を登ること2~3時間ほど。
登山道をはずれ、道なき道を進むと程なく斜面に出た。
聞けばここを下りると目的地はスグそこらしい。
なるほど・・・・・・耳を澄ませば水の流れる音も聞こえてくる。
逸る気持ちを抑え、斜面で滑らないように一歩足を踏み出すと
「カコォーーーン!」
背後で音がした。
何の音だ?と振り向くが、Aさん曰く「業者が木を切り出す音」だそうだ。
「コォーーーン!」
山に鳴り響く木を打つ音。
人に見つかっては面倒だと急ぎ斜面を下り、目的地の渓流に辿り着く。
重い荷物をようやく降ろしてテントを組み立てる。
まだ日は高く、釣り竿を投げると面白いようにヒットする。
相変わらず木を打つ音が山に響き渡る中、2人は夢中で魚を釣り上げた。
ふと気づくと時間も夕方近く、木を打つ音もいつの間にか止んでいる。
山の夜は早い。
森林作業員も下山したのかなと思っていると「ほぉぉぉぉぉぉぉぉい!」と、山に突然野太い声が響き渡った。
顔を見合わせる上司とAさん。
「ほぉぉぉぉぉぉぉぉい!」
森林作業員たちが下山を知らせているか、野生動物よけに声を出しているんじゃないか?とAさんは言う。
山に響く声は日が暮れても続き、テントで眠るころには止んでいた。
実際には釣果自慢がてら親睦会の場で話してくれたんだけど、この平成の世に斧で木を切り出すソレこそ木こりみたいな人なんている?
ましてや木を打つ音はするけど倒れる音は聞いていないらしい。
そもそも「ほぉぉぉぉい」って・・・・・・普通無線とか使わん?
これ数年前の話なんだけどそんなことあんのかねぇ。