運動のために、帰り道は2駅前で降りて歩いてる。
いつもと同じ道は芸がないなーって、ちょくちょく道を変えてるんだが、先日通った道は古い市営住宅とかが立ち並ぶ道だった。
住宅のドアを見ながら、「あー、灯り点いてない部屋もあるなー。やっぱりこんな古いの中々入らないのかなー」って眺めながら歩いてたら、俺と同じ目線の高さに、しっかり点いてる灯りが見えた。
台所にある下側が蝶つがいになってる窓があいてる。
なんていうのかな、全部開かなくて、45度くらいまでしか開かない窓、って言えば分かるのかな?
ふーん、料理でもしてるのかなって眺めながら通り過ぎようとしたら、その窓の隙間からすっげえ笑顔でこっちを見てる。
ヨコハマタイヤの看板みたいな、無機質な笑顔。
「うお、見てるのがバレた。いけないいけない」
そう思って目を逸らしたが、よく考えたら、中途半端に開くその手の窓から人の顔が見えるわけがない。
天井に顔がないと見えないレベル。
「えっ?」って気付いて振り返ったら、ヨコハマタイヤがニヤニヤしながら口を高速で動かしてた。
ダッシュで家まで帰ったわ。