知り合いの爺様から聞いた話。
その爺様は若い頃は、山で猟師をやっていたそうな。
あるとき、畑に悪さをする猿の群れを追い払うようにとの依頼をされて、猿の群れに向かって撃ちまくったそうな。
爺様はとにかく一匹でも多く退治しようと、山の中に入っていき、そこで一匹の猿をみつけたので、躊躇いもなく引き金に指をかけたそのとき、その猿が爺様のほうを見て、『どうかお助けください』とばかりに、手と手を合わせて拝んだそうな。
よく見るとその猿は、メスでお腹が大きかった。
まわりを見ると、前年に生んだ子供なのだろうか、若い猿が心配そうに見ている。
母猿はなおも必死で手を合わせて拝み、涙まで浮かべていたそうな。
爺様はそのことがあってから、猟師を辞めた。
都会に出て工場で勤めながら、趣味で仏像を彫っていたそうな。
そんな日々が続いたある日、仕事に行こうと玄関から出たら、アケビが山のように置いてあったそうな。
不思議に思って調べてみると、猿の毛があちこちについていたらしい。
そんな不思議な話をしてるときの爺様は、始終にこにこしていた。