彼女の頭痛には理由があった

カテゴリー「心霊・幽霊」

友人はほとんど霊感のない人間だった。

今から5年位前に、1度経験した霊体験らしき話。

友人の住んでいるところは東京湾沿いだった。
バイクに乗っている時にお気に入りの場所があった。

そこは超有名テーマパークの近くにある鉄鋼団地を抜けたところにある。
右手に横浜が見え、左には東京湾の景色が最高に綺麗に見えるところ。

友人が20歳になった時期、彼女を連れて何年ぶりかで、そこの綺麗な場所にドライブに出かけて行った。

彼女は少し霊感の強い子で、働いていた病院で怖い体験をしていた子だった。

何か、二人の記念日かで外食を終えて「とっておきの場所に連れてってあげるね」と、その時はすでに21時を過ぎていたと思う。

鉄鋼団地を抜けてだだっ広い堤防に行った時なんだけど・・雰囲気が、何か違う・・・。

当時のお気に入りの場所だった頃とは、何かがまったく違う・・・。
背中が寒くなるような嫌な陰気で、空気が流れているように感じた。
乗ってきた車を停車させると、停めた向かい側に潰されたような古い乗用車が1台あった。

タイヤを外されて、窓ガラスも全部割られ、ボコボコになったその車内にはまるで人が入っているかのように丸められた毛布が入っていた。
霊感はまったくないけど、何か不吉で嫌なものは感じていた。

彼女も同じ感じをしているらしく、顔が青ざめていた。

せっかくのドライブで、絶景の景色を見せたかったので、車からおりて彼女と外に出た。

「ここなんだ、いい景色だろ?」

綺麗に見える東京湾の夜景を前に、わざとらしく陽気な声でそう言って彼女の顔を見た。

しかし彼女は、その声には反応しないで1点を見つめていた。

「女の人がいる・・・」

小さな声で彼女が言い、顔は恐怖で歪んでいた。

彼女が見ていたのは、右側200メートル先くらいの堤防のところ。
先端の場所なので灯りもなく、遠くの船の明かりだけがぼんやり、かすんで見えるくらいの真っ暗闇の中で女が1人で座ってるのか?・・・。

目を凝らして暗闇をよく見る、何も見えない。

彼女:「白い服を着た長い髪の女の人がしゃがんで海の下を覗き込んでる・・・」

か細い近い声でそう小さく叫んだ。

その直後大きな声で「頭が痛い」と彼女は言い出したので、彼女を抱きかかえるようにしてクルマに戻り始めた。

途中のつぶされた様な乗用車の方も、見ないようにしてクルマに飛び乗って急発進させて、その場から逃げるようにして立ち去った。

彼女は助手席で黙ったまま苦しそうに俯いているだけだった。

そこから3キロほど車で走って、ようやく街の明かりが見えてくると彼女の頭痛が治まった。

「あぁ、あそこには何かあったんだな」って思ったよ。

後日談なんだけど・・・。

10日後くらいに新聞を見て驚いた。

あの時に堤防のテトラポッドに引っかかっていたビニール袋から女性のバラバラ死体が発見されたことが書いてあった。

あの夜に、二人があの場所に行った時にバラバラ死体があったんだと思うと急に怖くなった。

あのとき彼女が見た白い服に長い髪の女性が、その死体の人だと思うと・・・。
後から聞いた話では、鉄鋼団地は以前から心霊スポットとして有名な場所で、霊感のある人達は行かない方が良いと言われている場所です。

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