バイト仲間から聞いた話。
高2の時だったかな~。
その日は両親がいなくて夜一人で留守番をしていたのよ。
その時は肌寒い時期の11月の初めだったかな。
もうすぐ冬になるって感じの風が冷たくなって静かな夜だった。
リビングの隣は両親の寝室になっていて、そこにドレッサーの鏡台ってやつかな。
大きな鏡がついてる机があった。
やる事もなく一人で暇だったから、その鏡の前に立って「なんとか拳の構え」みたいな、テレビの映画で見たようなポーズをバカみたいにとり続けた。
その部屋はリビングの隣にあって、襖で区切られた部屋だったけど、いつも襖は全開に開いていた。
リビングの照明の灯りがあったから、その部屋の明かりはつけてなかった。
薄暗がりの中鏡に向かって目を閉じて瞑想しながら、ゆっくり目を開こうとした時。
鏡の奥・・・。
薄暗い部屋の奥の押入れの前に、誰か人が立ってた。
あれ??
今日は誰もいないのに何だろ?
洗濯物が置いてあるのか?とはじめは思った。
いや、違う。
ちゃんと足もある、しかも男。
リビングから届くわずかな薄暗い光で肩から下はなんとか確認できたが、その上は暗くて顔がどうしてもわからない。
微動だにしない鏡の中の男。
頭の中で、泥棒や外部侵入などとは思えなかった。
何か不吉な「危険」ものだと思った瞬間!
足を肩幅に開き両手を前に突き出した「瞑想の構え」のまま硬直した。
鏡の中にいる、その男から目が離せなくなる。
・・・ん?この男は、笑ってる?!
でも、笑い声も何も男からは聴こえない。
今までにない、体中がゾクッ!という恐怖に包まれた。
ただ肩を上下させ笑い続ける鏡の中の男。
と、突然男が歩き出した!
「来るな!」と思った瞬間その男はリビングの方に消えていってしまった。
鏡からその男が消えてから、「うわぁ!」と意味の無い声を張り上げ全速力で自分の部屋に戻って布団にくるまり震えた。
家族に言っても誰も信じちゃくれないし、そんな男には心当たりは無いと。
以来、そいつには会ってない。