みんなが知っている私のナンバー

カテゴリー「不思議体験」

夫は「駐車場で見つけやすいから」という理由で、歴代の車のナンバーをすべて1234(仮)に統一している。

私の現在の車は夫のお下がりで、なので当然ナンバー1234(仮)。

この車、満車の駐車場でもすぐに見つけられるのは確かなのだが、いかんせん目立ちすぎる。

夫は自営業でなんでも話のネタにするため、あっという間に、「ナンバー1234(仮)の車は、◯◯屋さんの奥さん」というのが、お客さんの間で広まってしまった。

「奥さんの車、さっき××スーパーで見ましたよ」
「ああ、今日特売ってはりきってたから」

みたいな感じだ。
あまり気にしていなかったが、そのうち不思議な目撃談が立つようになってきた。

「昨日夜遅く、奥さんの車とすれ違いましたよ」
「昨日の夜は、一緒に家にいたけどなぁ」
「さっき、奥さんの車コンビニに停まってましたよ。今日休みなんですね」
「朝仕事に行ったけどなぁ」

みたいな感じだ。

だいたい私のアリバイがしっかりしていることが多く、変な疑いがかけられることはなかったので、夫も私もお客さんの見間違いだろうということにしていた。

ところが。

ある日仕事中に、夫から着信があった。
こっそり出ると「今どこ?」と言う。

私:「どこって、仕事中だよ」
夫:「だよなぁ・・・・・・今、お前の車が目の前走ってんだけど」

私:「はぁ?んなわけないでしょ」
夫:「いやでも、ナンバーが一緒で・・・あ、曲がった」

電話の向こうで方向指示器の音がする。
どうやら追跡しようとしているようだった。

仕事中に馬鹿げた電話してきて!と、普段ならイライラしそうな状況なのだが、なぜかそのときは不思議なほどの不安を感じていた。

夫:「あ、なくなった・・・」
私:「それ、本当に私の車?」

夫:「だってあのナンバー、間違えないだろ」

そう言いながら、夫の声がだんだん小さくなる。
私と同じ気持ちになったのだろう。

「つかまえなくてよかったのかもな」

それでそのときは電話を切った。

普段なら見間違い勘違いですますようなことだけれど、、なぜかこのときは、夫が見たのは確かに私の車だったんだろうという、嫌な確信があった。

ちなみに、一応職場の駐車場も確認したが、今朝乗ってきた車は、当たり前のようにそこに停まっていた。

ドッペルゲンガーを見かけると死んでしまうというが、車のドッペルゲンガーの場合はどうなんだろう?

車だけが壊れるのだろうか、乗っている私ごとだろうか。
とりあえず、自分自身が私の車を目撃することがないよう、祈りながら毎日通勤している。

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