近所の住宅街に隠れ家的なレストランを見つけた。
北欧風の一軒家のような雰囲気でいつか行こうと目をつけていた。
とある日のランチの時間帯に、そのレストランへ行ってみることに。
入り口の扉から店内を見ることができず、営業中なのか準備中なのかわからない。
とりあえず店の人に聞こうと、扉を引いた。
カギはかかっておらず、扉は開いた。
営業しているのか?
入り口の右手にはレジ、左手には二階に上がる階段。
店内奥にはテーブル席がならんでいた。
想像どおりのこじんまりとしたレストラン。
だが店内に人の気配はない。
店内に2,3歩足を踏み入れて「すみませーん」と声をかけても返事がない。
背にしていた入り口の扉がギイと開く音がした。
振り向くと、誰かがものすごい駆け足でダダダダと二階に上がっていった。
一瞬のことでわけがわからない。
店の人なのか?
客なのか?
店の人なら、私の姿を見て声かけないのか?
そんなことを考えていると、1階の薄暗い店内の奥から新たな人影が現れた。
今度こそ店の人だ!と思って「あのー」と声をかけようとした。
その人は無表情で無言のままスタスタスタと私に近づいてきた。
そして無言のまま私の肩をかすめて後方のレジへ向かった。
店の人なのになぜ客を無視する?まるで私は空気。
あまりのことにボーゼンとしてしまう。
店の人は私を無視し続けてレジのお金を勘定しているようだ。
ひょっとして泥棒と思われたのだろうか?
そうだとしてもまず泥棒を捕まえるのが先だよな?
わけわからん。
顔色ひとつかえず無表情でレジの金を勘定する店員。
それをボーゼンと見つめる私。
不思議な無言の時間が流れる。
ふりしぼるように「あの・・・店は営業中でしょうか・・」と声を出した。
店員は無表情のまま「20分後にオープンです」と機械的に答えた。
なんなんだこの不気味な店は。
私はさっさと店を出て、二度と来ることはなかった。