山の話です。
昔からマヨイガという話がありますが、それを彷彿とさせる話があります。
終戦すぐの時ですが、ある山村がまだ林業にたずさわっているころでした。
山深い奥地に、誰が建てたかわからない山小屋がありました。
奥地で山仕事をしたあと、宿泊するのに便利なので、そこに泊まった人がいたのですが、泊まった人間が、数日後~1週間後に全員死んだそうです。
村に戻ってきて死ぬ。
8人くらい死んだそうです。
それで、その所有者不明の山小屋での宿泊は忌避されたと。
誰がいつ建てたのかわからない。
その山小屋には、ほとんど何もないのですが、鏡台が1つ置いてあったそうです。
ある時、隣村の人間がやってきて言うには、「昨夜は、遅くなったので山の中の小屋に泊まった」と。
あの小屋です。
村の皆は恐れ、この隣人は死ぬと思ったそうです。
しかし、彼は死ななかった。
あとでよく聞くと、彼は、夜遅くに小屋に立ち寄ったため鏡台に気づかず、早朝になって、そのまま小屋を離れたと。
どうも、小屋にある鏡台の鏡を覗くと死ぬらしい、という話になりました。
村の豪胆な若者が、その鏡台を壊しにいきました。
元凶であるその鏡台を壊せば、その小屋は、山仕事に便利だからです。
昼間に山小屋を訪れ、てぬぐいで目隠しをして手探りで鏡台を探し出して、鉈で打ち壊しました。
彼は、村に帰ってきて次の日に死んだそうです。