思い出話をひとつ。
まだ自分が小学校にも入ってないくらい昔(数十年前)に、近所に同い年の女の子が住んでいた。
見た目はちょっと覚えてないが普通。
普段の言動も、遊んでいる時たはずだと記憶しているんだけど、その女の子は時々「意味不明」でよく分からないことをさも当たり前みたいに言い出すことがあった。
例えば、
・雨の次の日は鳥と犬が小さくなったり大きくなったりする。
・左右逆の人がよくいるけど、どうしてああなったか見たことある。
・地面スレスレのところにいる繋がっている煙。
ざっとすぐに思い出せるのがこんな感じの発言で、本当に急に脈絡なくそんなことを言ったり俺に話しかけてきたりして、俺がもう一度「なに?」と聞き返しても、彼女はそのまま同じことを当たり前みたいに繰り返すだけだった。
でも、そういう発言以外は普通の女の子で、性格はけっこう気があったし仲はかなり良かったから、俺も当時はさほどそれ自体を気にはしていなかったんだと思う。
だけど、ある日急にその女の子はうちに来なくなった。
その子の家の場所は俺も何度か行っていて知っていたから、こっちの方から久しぶりに出向いたら、その家は何ひとつもないただの空き家になっていた。
はじめ俺は女の子が引っ越してしまったんだ、と大きなショックを受けた。
朝から夕方まで一緒に遊ぶこともあったし、大した喧嘩もほとんどしたことがなくて、一番か二番の友達くらいには俺はその時思っていたから。
だから、何も言わずに急にいなくなるのは薄情だとさえ心底強く思った。
苛ついて、行き場のない気持ちになっていたと思う。
俺はそれで、ふてくされて半泣きになりながら、親とか他の友達にそのことを話しにいった。
そうしたら、今度はみんな一同に返ってきたのは「知らない」という気のないというか、興味のなさそうな返事で、最初は何を言ってるんだ?とまた怒ったしかなり腹が立った。
でも、彼らの話をよくよくちゃんと聞いてみると、それは「その女の子を見たことも聞いたこともない」という意味の知らない、という返事だった。
何度も確かに一緒に遊んだことがあるはずの友達を問い詰めても、返ってくるのは本当に知らない、という感じの戸惑いの様子でみんな似たような答えだけで、俺以外に誰もその子のことを覚えている人は、一人として全くいなくなっていた。
その女の子は最初からどこにもいなかったみたいに、突然消えていなくなった。
いきなり姿も、その存在も消えてなくなってしまった。
今はもう地元に長い間帰ってないし、その子が住んでいたはずの空き家も随分前に取り壊されてとっくに更地になっている。
その子に関係するもの、証明するものはもうどこにもなくて、ただ俺が印象的に覚えているだけの昔の話なんだけど、とりあえず、ちゃんと留めておきたくてここに書き込んでみた。
長文乱文失礼しました。