ストーカー事件のニュースを見て・・・区切りとして投下。
バイト先で知り合った二つ上の彼氏と付き合って約1年。
お互いに新社会人になり、忙しさに参りながらも励まし合って頑張ってた。
私の就職先は言わば弱小で、でも仲良く頑張る貧乏家族のような雰囲気だった。
入社から半年経ち少しずついろんなことを任せてもらえるようになった。
その時期から、研修で大変お世話になった上司の様子が変になった。
困ったことはないか?の心配から始まり、相談していいよ!と繰り返す。
挙句、私が悩んでると決めつけて二人で飲みに行こうと執拗に誘ってくる。
断っても拒否しても、それを遠慮と捉える上司(40代独身)に寒気がした。
ついに社長からの注意が入るくらい問題視されても、しつこさは変わらない。
仕事にも支障がきたしてきたので、結局上司はクビになってしまった。
彼氏に相談はしていたが、「ちょwおっさんw」と言ったような反応だった。
悩んでるのに!と怒ったりもしたけど、次第に私も気にしなくなっていった。
上司がクビになって3ヶ月ぐらいが経ったある日。
彼が私のアパートにくることに。
いつもはチェーンまでかけるけど、彼が来るときだけは、鍵だけかけてチェーンはしなかった。
が、その時はいつもの癖で鍵をかけた後すぐにチェーンまでかけてしまった。
彼が来るからチェーンをはずそうと思った時、私は変なにおいに気付いた。
それは調味料の類いの匂いで、朝ご飯作った時のかな?換気しなきゃなと思って、チェーンをはずさずに部屋の電気をつけて、布団が目に入った瞬間私は叫んだ。
恥ずかしいけど敷きっぱにすることが多々あった布団が、真っ黒になってた。
その周りには醤油や料理酒などの、調味料の空容器が転がっていた。
異様なその光景が怖くて怖くて、外に出ようとしたけど腰が抜けてしまってた。
這うように玄関まで行くと、外側から鍵がガチャっと回されたところだった。
彼氏だ!と思って一瞬安心したものの、チェーンのまま勢いよく開けては、ガン!ガン!ガン!ガン!と何度も何度も乱暴にドアを開けようとしてた。
え?彼氏?と思って震えていたら、ドアの隙間から人が顔をだした。
遠くへ引っ越したと聞かされていた、あのクビになった上司だった。
私はたぶん叫んだと思う。
全身が氷水に浸かったみたいに一瞬で冷えた。
黒い布団も怖いけどそっちの方がましだ!と思ったのに体が動かなかった。
私がパニクってると、元上司が真顔で「なんで」と言ってきた。
「なんでこういうことするの。なんで入れないの。早く入れて。ちゃんと今でも好きだから。愛しているから。だからだよ。ただ会いたかっただけだから。許してあげるつもりで来たんだから。許してあげるのに・・・また僕を怒らせてお仕置きされたいの?」
じーっと見られながら真顔で淡々と話してきた元上司は、肉般若を彷彿させた。
私は頭が全然回らず「待って、待って」とただ繰り返した。
すると、それがよかったか元上司は「待ってあげる」と言ってドアをしめた。
上司の顔が見えなくなって、ようやくちょっと落ち着いた私は彼に電話した。
警察は頭に浮かばなくて、次期来るであろう彼に教えなきゃ!と必死だった。
彼はすぐに電話に出てくれた。
早く伝えることができて安心する反面、彼が即座に電話をとれる状況に私は愕然ともしてしまった。
私のアパートには駐車場がなく、彼は近くの別の駐車場に停めてから歩いてくる。
だから、彼がすぐに電話に出れると言うことは、歩いていると言うことだった。
私はどうしようと焦りながら、ガクガクとした声で状況を彼に伝えた。
「今あの上司が来てる、危ない様子だから来ちゃだめ、お願い来ないで」が、危機感のまるでない彼は「今更オッサンw」と取り合ってくれない。
こっちは泣きながら、来たら危ないと伝えてるのに、彼は「駐車場でた~」と。
あと3分ほどで来てしまう、どうしよう、どうしよう!と思っていたら、ピンポーンとチャイムが鳴った。
すっごくびっくりしたけどバカな私は、「もう上司はいなくて、彼が着いたのかも!」と変に期待してしまった。
しかし、除き穴から見えたのは変わらず真顔で立ちすくむ元上司の姿だった。
彼に「怖い!助けて!」とさっきまでと反対のことを思わず叫ぶと、「大丈夫大丈夫w行くから~w」と言われ電話が切られてしまった。
そしてまた、今度は連打でピンポンピンポンピンポンとチャイムが鳴った。
彼が刺されたりしたらどうしよう!?とか、ピンポンの音にすくみあがってしまい、私はもう訳が分からない状態のまま「あー!!!」と叫んでしまった。
と、チャイムが止み、それと同時に笑い声と唸るような声が一緒に聞こえてきた。
笑い声は彼の声だった。
「(私)~、大丈夫だぞ~w安心しろ~w」と彼が言い、唸り声も聞こえたが、それでも私は安心した。
彼の身が心配だったけど。
「(私)~、開けなくていいから聞いとけよ~、もう本当に大丈夫だからな~。
オッサン捕まえたからな~、泣いてるか~?大丈夫だぞ、安心して泣いとけ~」と彼がドア越しに話しかけ続けること15分後、警察が来て上司を連れていった。
「大丈夫ですか?もう安全ですよ。あなたの無事を確認させてください」と警察官に言われ、泣きながら震える手でチェーンを外すと、外にはキリッとした警察官と相変わらず笑ってる彼がいた。
その後の上司は精神病院に入院したらしい。
危害は加えられてないから、逮捕はできなかったのかもしれない・・・詳しいことは聞きたくなくて聞いてない。
彼や警察官の方々が、もうこれからは大丈夫と言ってくれたのでそれを信じた。
安直かもしれないけど、彼や警察官に言われればそれだけである程度安心できた。
上司はクビになる前に書類から私の住所を把握、鍵は針金?で地道に合わせて
作ってたみたいで、部屋に入って布団で寝て、興奮が収まらずにあんなことをしてしまい、一旦逃げたけどまた戻って来たとこだったらしいです。
あと少し私が遅かったら・・・チェーンしてなかったら・・・と考えると今でも怖い。
あの時彼は、電話口での支離滅裂な私の言葉の節々から状況を察知し、一旦電話を切った後すぐに警察に通報し、制止も聞かず走って来たらしい。
笑い声をあげたのは単純に上司がおかしかったのと(何故か半ケツだったらしい)、私をちょっとでも安心させるためだったと。
彼は、いざというときにはちゃんと私や将来の子供を守れるようにと、鍛えたり護身術(?)を内緒で習っていたようで、絶対に守りきる!と思ってたしそのつもりだったから、オッサンを相手に捕まえ押さえるのに、全く怖くなかったと言っていた。
電話での軽口も、危機感がない訳ではなく安心させたかったかららしい。
警察官に多少叱られてはいたが、この人と添い遂げたいと本当に思った。
修羅場の意味合いがちょっと違うかなとも思ったけど、これが私の経験した修羅場でした。