母の実家のある地域の話。
私の実家は前は日本海すぐ後ろは大山という非常にへんぴな場所にある。
そこには昔から変わった風習がある。
年に一度(特定を避けるべく日時は明かしません)、部落民全員が日没前に公民館に集まり、その日は夜明けまでそこで過ごすというものなのですが、ちょっと奇妙なんです。
公民館は儀式当日には窓や換気穴等が徹底的に目張りされ、本当に一切の覗き穴が無くなります。
そして、部落民は日没前に部落外に出て一晩過ごすか、日没前に公民館に入り一晩過ごすか選択します。
公民館の中ではみんなでご飯を食べたり、トランプをしたりと楽しく過ごすのですが、泣き声は厳禁とされます。
ですから赤子は参加できません。
小学生の私は父から、その日だけは何があっても絶対に泣くなと厳しく言われました。
また、窓に触ろうものなら気が狂ったように怒鳴られます。
そして夜が明けた頃(中から外は見えないため8時までは待つ)に部落長が一人で外に行き、一時間くらいすると戻ってきて、外に出ることが全ての人に許可されます。
出ていく時の部落長は子供でもわかるほど緊張していて、顔面蒼白で、帰ってきた部落長は倒れ込むように疲れ切っています。
私はもう10年以上、その日には実家に戻っていないため、経験はしていませんが今も続いています。
公民館の外では一体何が起きているのかはいまだに分かりません。
それを知った者はいずれ部落長を経験せねばならないからです。
儀式当日の部落長の異常な狼狽振りを知っているため、私の父も兄も、何が起きているのかを知ろうとはしません。
無論、私もです。