大好きだった飼い猫が死にました。
13歳、心臓発作での急死。
心の準備もできないままに、お葬式に出しました。
昔からのいわれで、行きと同じ道を通って葬儀場から帰ってはいけない、と言うものがあります。
死者がついて来てしまうから、だそうですが、あの子がついて来てくれるなら本望だと、わざわざ同じ道で帰りました。
帰宅したのは夕方を少しすぎたくらいの時間でしたが、何も手につかないしお腹も減りません。
しばらくひとりにして・・・と家族に告げて、部屋のキャットタワーに残るあの子の毛をかき集めていました。
いつの間にか床で寝てしまっていて、起きたのは深夜を少し回った時間でした。
お腹、空いたな・・・と、のそのそ起き上がり階段を下りると、玄関のドアから風が吹いてくるような気がしました。
さすがにきちんと閉まっていますので、そんなはずはないのに。
私はなんとなしに、あの子が帰って来たがっているんじゃないかと思いました。
台所からお菓子をあさって、玄関前に戻りドアを開け、その場で待ちました。
帰って来てくれるはず、あの子は賢いから、きっと迷ったりしない。
1時間はそうしていたと思います。
12月の半ばなのでまあまあ寒かったのですが、そんなこと気にならないくらいに、必死でしたが。。。
あたし何やってんだろ。
自分自身に苦笑して諦めて部屋にもどろうと、ドアを閉めるため立ち上がったのとほぼ同時、大きな風が吹き込みました。
たべちらかしたお菓子の袋が廊下の端まで飛んでいって、急いでドアを閉めようとした私の視界の隅っこに、白い何かが横切りました。
あの子だ!と思いました。
あの子はペルシャという品種で、白くて長いふわふわの毛がご自慢でした。
そんなにブラッシングをしなくとも、いつも自分で綺麗に毛繕いしていました。
涙がブワッと溢れ出て、私はただ嬉しくて。
「待ってたよ」
ドアをしめて二階の自室に駆け上がり、ドアを開け放しました。
入り口を見つめますが、なかなか来てくれません。
さっきのことを思い出して、少し目線をずらすと、やはり視界の隅っこに白いあの子が入ってくるのが見えました。
また一緒に暮らせることがとても嬉しかった。
直接は見れないけど、視界の端で動き回るあの子が見える。
私は満足して、いつも通り深夜のb級映画を少し見て、心地よい眠気とともにベッドに潜りました。
あの子は猫らしさ全開のいわゆるツンデレで、もともと気が向いた時にしかあまえてきてくれないんです。
あの子の自慢の毛はいつもふわふわでした。
最近はやり出した、ミルク風味のすぐ溶けてしまうかき氷みたいな、優しい触り心地、だったはずなのに。
私の足に触れたのは、少し固くて、ゴワゴワしていてそれはまるで、まるで
人間の髪の毛のような・・・。
その瞬間とび起きました。
私は失敗した。
何か違うものを招き入れてしまった。
理解した瞬間恐ろしくなって、布団をめくる気にもなれませんでした。
部屋を飛び出して、22歳にもなって初めて親の隣で寝ました。
親はあの子をなくしたショックが大きかったんだろうと解釈したらしく、頭を撫でてくれましたが、私は恐怖に震えていました。
しかしいろいろあった1日ですので、親になだめられるままにそのまま寝てしまいました。
起きると、真っ暗な場所にいました。
右も左も、上も下もわからない。
今考えれば夢なのに、夢の中の私はそれを夢だと認識できずにいました。
暗闇の中で、私は耳を塞いで震えていました。
何か小さな声が聞こえます。
ーーーの?
なのーーー?
徐々にその声は大きくはっきりと聞こえます。
だめなのーーー?
どうしてわたしじゃだめなのーーー?
夢の中の私はひたすら謝っていました。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
もう一度目を覚ますと、親の寝室でした。
親はもう起きたようで、私はひとりでした。
親に昨日あった出来事を話すかどうか迷いましたが、自室におそるおそる戻ると開けた覚えのない窓が開いていて、なんとなく、何処かに帰ったんだなと思いました。
それからは少し家なりがするたびに過剰に驚いていましたが、何も起こっていないところを考えると、取り憑かれるようなことは起きていないのかな?と思います。
今回、私が呼んでしまった何かがどこから来たものなのか、どういう経緯で天に召された人なのかを私は知りませんが、その時お願いしたペット葬儀場の近くには土地柄か、たくさんのお墓や火葬場があったので、やはり同じルートで帰ってくることはお勧めしません。