ずっと前に警備員してた頃、いつも警備員を呼んでくれる工場が設備の一新で取り替えるから操業を土日完全ストップしたんや。
で、土日の昼は工場の担当と工事屋が来て設備を撤去して新品くっつけるんやけど、工場が停止してて夜間に働く人間おらんからいつもは守衛のために警備員呼んでるけど今回だけは8時~20時と20時~8時で警備員1人ずつ置いて時折巡回せえ言うんよ。(大手警備会社のセンサーやカメラがついてない箇所や部屋も多かったからね)
さすがに土日のに仕事したいやつはおらんから、社員のワイが夜、後輩が昼間行くことになったんや。
昼は巨大なベルトコンベアや室外機をクレーンで吊り上げて撤去したらしい。
後輩いわく何も起こらなくて楽勝だそう。
ワイは適当に巡回かまして仮眠取って朝までやりごせばいいやと思って、施設の外周を懐中電灯持って回って借りたカギでカギ開けて全部屋確認した。
でもコントロール室だけカギがかかってない。
分電盤や水道バルブがあるから機械撤去の時にカギあけて閉め忘れたんかなと思った。
で、そこの1番奥の水道管に隠れるような位置に錆びたドアがあってそのドアはカギがないんや。
後輩の巡回表にはそのドアの事書いてないからとりあえず開けたんや。
中は打ちっぱなしコンクリートで下に吹き抜ける形になっとった。
業務用エレベーターでも作ろうとしたんやろか。
下に部屋らしきものがあるし一応見とくか程度に錆びた階段を降りて下まで降りたんや。
下は今は使われてない物置やった。
相当昔のカレンダーとかが置かれてて、何もないから上に戻ろうとしたらいきなり上のドアが閉まったんや。
ドアが閉まっただけやったら室内に風が吹き込んだだけや思ったが、明らかに
人影も見えててん。
何かわからんもんよりさすがに巡回中に近所の子供に侵入された、こらアカン思って急いで上まで上がって外に出てん。
でもイタズラやったらわざわざ機械室まで誰も来ないし、場所がわからへん。
さすがにまずい思って守衛室のモニター(門やトラック置き場くらいしか見れんが)を再生しに戻ったが門はカギかかってるし、誰も侵入した形跡あらへんかった。
壁やフェンスに穴でも開いててそこから子供が侵入してイタズラこいたか思ったが、穴もないし壁やフェンスの1番上には有刺鉄線ついてるから入りようがない。
くまなく探してるうちに朝になってて、ワイは時間切れで帰ってしまった。
というか帰りたかったし、侵入許したワイがアカン思って始末書書かされる覚悟しとった。
で、2日目の日曜は雨の中機械の搬入と動作試験を昼間にやってたそうや。
どうやら車両が多く入ったそうで普段やらん交通誘導?ちょこちょこやらされて後輩はあまり巡回できんかったらしい。
一応夕暮れ時に最低限はやったそうで、全部屋のチェックまではできんかったらしい。
コントロール室も見た言うから水道菅の裏のドア開けか?言うたら不気味すぎて見て見ぬふりしたらしい。(気持ちは痛いほどわかる)
最後まで残ってた業者もワイが仕事就く頃には撤収してまたワイだけになった。
昨日みたいになったらアカン思ってちゃんとモニターも見てたんや。
古いからなのかモニターがやたらと、ちらついたりしてたんや。
っていうか見てると段々画質が悪くなるんや。
こうなるとモニター見てる方が不気味やから腹決めて巡回出たんや。
巡回するはいいけど雨やから懐中電灯持ってても前がよう見えんくて、自分と明かりを向けてる先以外にもう見えるもんがほとんどなかったんや。
で、トラック置き場歩いてると、自分以外の何かがいる気配はするんや。
そもそもワイみたいなやつに霊感なぞないし、でも音もしないからわからんし
明かり向けてもなんもなかってん。
でも後ろに確実に何かはおるんよ。
今考えれば不気味だっただけかもしらんがで、巡回終えて守衛室戻ると電気もモニターも全部消えてるんよ。
電気つけっぱにして誰か居ますよってアピールするせなあかんから消すわけないんや。
で、電気のスイッチ付けてもモニターだけは復旧せんのや。
死にたくなるほど怖かった。
帰りたかった。
数分したらモニターもついたからこのポンコツが思ったわ。
明け方っていうか4時くらいにラスト巡回一発やって帰るか思った。
でも巡回中ずーっとワイに追い風が吹くんや。
どの方角に歩いててもやで、外周歩いててやっぱり何らかの気配するんよ。
せやさかい怒られるの覚悟でスタスタ歩いて全クリしようとしたが同じ速度で背後に何かついてきてんねん。
振り向いて懐中電灯で照らすと・・・まあ、なんもない。
気配やからね。
でラストに工場の中を抜けて巡回も終わりで工場の中入ると機械の電気は入ってないと聞いていたがスイッチ入っとんねん。
扉閉めんの忘れて電源入った原因を探ろうと工場の中歩き回ってると、小さなパネルの明かりを見て気がついたんやが、ワイのとワイのじゃない影があんねん。
とてもじゃないが気が気じゃなくて電源がどうのこうのより守衛室戻りたかった。
急いで戻るんやけどワイがドアに近づくと案の定ドアが先に閉まるねん。
開かない、とかはないんや。
普通に開くねんそれでも怖かった。
巡回はやったことにして守衛室のモニターだけずっと見てた。
暗くても多少は写るがやっぱちらつく画質が悪くてちらついてるのが勘違いで
なんかの影を写してて一部が暗くなってたんや。
ちらつきの正体がわかったら。
もうあかんかった、動かれへんかった。
怖いってこういうことかと身体に叩き込まれた。
で月曜の朝になって工場の作業員が来て事務所のカギ開けて機械の電源入れる言うから電源入ってたらしいんや言うた。
さすがに不審がられた。
でも電源入ってるやからしゃーないやんか。
平日くる警備員も来たから時間切れやし。
で、警備員呼ぶ担当のおっさんに時間やけカギ返すときしつこく「何もなかったよね?」って聞かれて。
言っても信じてもらえやんから何もなかった言うて帰ったんや。
数日して同じ仕事した後輩と話しとって「ワイさんよくあんな水道管のとこ開けたな、あんなとこ絶対なんか居りますよ」言われたわ。
何より後輩も土曜の昼はなにもなかったが日曜は昼でも職人がいても不気味やったそうや。
今思えばワイが開けたドアから何かを放ってしまったんやろうかと思う。
忘れられてる物置にしか見えんかったが。
これがワイのぼんやり怖い話や。
10年くらい前の神奈川県の話やで。