とある目的で、入山が禁止されている山に入ったのだそうだ。
朝暗いうちに山に入り、午後には目的を達成して、帰り支度にかかった。
帰り道の下り坂途中で、背中へ視線を感じたのだという。
焦って振り返ると、後方の岩棚からこちらをじっと見ている一団があった。
時代遅れの服装をした、年齢もばらばらな登山者たちが彼を見ていた。
三十人ほどの集団は皆一様に無表情だったという。
まるで白黒写真のように、彼らには色が着いていなかった。
恐怖よりも先に危険を感じた彼は、その日の獲物をその場に置き、後ろも振り返らず一気に下山したそうだ。
豊かな山っていうのは、やはり何か訳があるんだな。
そう彼は言っていた。