縛られていた奥さん

カテゴリー「怨念・呪い」

気立てがよくて料理上手ってかんじだったな。
何って、俺の奥さんのことだよ。

部下や上司をつれてっても、文句もこぼさず、もてなしてくれてた。
ノロケじゃないから最後まで聞いていきなさいって。

大事にしてたつもりなんだけどさ。
男の大事にするってのは、老後も苦労させないって決意なんだよね。
俺もそうでさ、仕事にうちこんだよ。

ある時、直帰できたときに、奥さんが慌ててたのね。
変だなと思いながら着替えにいこうとすると寝室に入る前に止めようとするの。
まさかな、と思いつつも開けたら、男はいなかったけど、ベッドが乱れてた。
その時は、とっさに、昼寝してたのか、で済ませたんだ。
行為の後のシミは見なかったことにした。

それから一年位、トラブルもなく過ごしてた。
ある日、俺は部長に呼ばれて、昇進することになったんだ。
正直、仕事が出来る方でもないから、「えっ?」って感じ。
えこひいきだろって思いが、ひょっとしたらこいつが・・・って思いに変わった。
その時も、何にも言わなかった。

でも猜疑心てさ、一度持つと育つんだよね。
ある営業出張でね、取引先の担当者が、車にハネられて、アポつぶれたんだ。
翌日から有給とって、奥さんとその界隈旅行することになってたの。
けど、どうしても気になって、東京に戻ったんだよ。

玄関あけたら男物の靴が目に入った。
一足じゃない。
二階からはギシって物音がする。
さすがにそこまでくると、我慢できんかった。
駆け込んで、開けたのね。

想像してたような光景とはまったくちがった。
奥さん、縛り付けられてるんだよ、ベッドで、でも違うんだ、セックスじゃない。
周り囲んでるのは、坊さんとか、聖書もってる神父?
縛りつけられながらばったんばったん腰だけつきあげるように暴れてるんだ。

目は剥いてて、俺が視界に入っても、まったく気づかずに睨みつける。
タオルで口ふさがれてんだけど、よく見ると血がにじんでんのよ。
ここまでみたとこで、中にいた一人が俺を外に連れ出した。

奥さん、呪われてんだって説明された。
俺が奥さんと結婚した時に、昔の同級生の娘が自殺したことがあったんだけど、呪いの犯人はその娘で死亡時刻、近くになると、急に暴れだすんだってさ。

俺の事を好きだったけど、告白もできずに、俺が結婚した相手を恨んで呪ったらしい。

判明したあと、貯金きりくずして、有名どころから無名どころまで、すがるおもいで駈けずりまわったよ。
でも、だめだった。
奥さんが、離婚届持ってきて「押してください」って泣きながらいうものだから。
押しちゃったよ。

離婚して一月もしないうちに、手紙がとどいた。
暴れなくなったらしい。
俺はいまでも素直に喜べない。

除霊とかお祓いとか、受けてから、しばらくは普通でいられたらしい。
翌日からの旅行、楽しみにしてたから、あの日、人を呼んでたんだろうな。

思えば、よく皿が変わったりとかしてたよ。
昼間暴れて、それを俺が気づかないレベルで掃除してたの、大変だったろうな。
なんで世の中ってあくどいやつが得するようになってんだろ。
てか呪いって悪意があるやつにしかかけられないじゃん。

思い出しただけで最悪、寝るわ。

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