※この話は3回に分けて投稿しています。【その3】
なんで俺は生きてるのかってことと、フィンガーさんは最後に俺の頬に突き刺さったが、それまでは優しい霊?だったぞと尋ねた。
すると、○家のワラズマは特別なので、中に何が入っているかは、作った当初から行者以外は誰も知らなかったそうで開けたのが、行者オリジナルだったからじゃないかと言われた。
でも強力なはずなのに、俺が何事もなく生き残るとか、わけわからんよな。
あと、とりあえずこれだけは弁解しなくてはとあの部屋には襖があり、最初から開いていたと言ったら、「四方が壁の部屋にキミが入れた時点で、なんとなくわかっていた。きっともう、うちのワラズマも寿命だったんだ」と言われたよ。
それに、人間の恨みがどれほど恐ろしものなのかは身にしみてわかったから、俺のことを恨む気にはなれないって、遠い眼をして微笑んでた。
○家はバブルが弾けて会社が潰れ、負債を抱えて一家離散したんだが、四男さんは離散した後、兄弟や家族がどうなったか知らないと言っていた。
家族が離散したのは、少しでも降りかかる禍を分散させるために、意図的にそうしたらしい。
手紙や電話でも、繋がったとみなされ連鎖するので、いまでも誰とも連絡は取り合っていないそうだ。
そう話してくれた四男さんは、仕事中の事故で両足と左腕がなかった。
障害者になり、自分だけではどうしようもなくなり、○家とは直接血が繋がらない、ワラズマの恩恵を受けていない親戚に助けを求めたから、俺は彼を見つけられたみたい。
迷ったが、俺はA子に知ったことを全部報告した。
親には話しづらく、かと言って自分の胸だけに留めるには重すぎた。
A子は実家のほうにワラズマのことを尋ねてくれたんだが、彼女の先祖は行者ではないし、よくわからんけど祓うタイプの巫女ではないらしく、そういうものは世の中にいくつも実在するという返事がもらえただけで、それ以上の新しい情報は得られなかった。
で、最後に彼女が教えてくれたんだが、俺の頬につけられたフィンガーさんの印。
これは別に、ワラズマみたいに富や名声を与えてくれるものではなく、大事故からでも生還できるというものでもないらしい。
「何があってもこいつだけは祟らない」という目印らしい。
ただし、弱い悪霊除けくらいにはなるとのこと。
あと旅行先で出会った女の上半身。
あれはフィンガーさんかもしれない。
恐すぎて指先なんて見てなかったが、A子に押されて俺が目の前に飛び出した後のクネクネした動きが子供の時に会ったフィンガーさんの動きに激似だったような気がする。
ということは、彼女は少しづつ元の人の姿に戻っているんだろうか?って話したら、A子に「私はあの上半身、いろんな人間の指の集合体みたいに見えた」って言われてまたビビった。
フィンガーさんは、確かに指一本だったはずなのに・・・って思ったけど、必死で思い返すと、あの部屋で寝ていたときに、最初に聞いた、何かが落ちるような音、複数だったような気がするんだよな。
夢うつつだったし、自信はないんだけど。
で、これを書こうと思ったきっかけなんだけど、二、三日前に、駅の構内でフィンガーさんを見かけたからなんだ。
仕事の外回り中、電車の中から外をなんとはなしに眺めていたら、ホームにいた人の肩に止まっている指を一本見た。
電車が走り出す頃には、指は肩から落ちて、ホームのコンクリートの床を尺取虫みたいに這ってた。
周囲の人は、誰も気がつかないみたいだった。
ただ、遠目からだけど、凄い太かったんで、あれは絶対男性の指だと思う。
ひょっとして、フィンガーさんの仲間はたくさんいるんだろうか?
それともあれは、フィンガーさん集合体の部品だったんだろうか。
ちなみに、俺の職場は都心だ。
でも、○家はぜんぜん違う場所だったよ。
以上で俺の話は終わりです。
あの事件以来、最近までオカルト的なものから逃げ続けてきたので、似たような話や、フィンガーさんやワラズマについてなんか情報があれば教えてほしい。