スイス人の老夫婦がペットのプードルを連れて、中国の某所へと旅行に出かけた。
現地に着いた老夫婦は昼食をとるために繁華街に店を構える中華料理屋に入った。
料理を注文する際に、ウェイターに向かって「この娘(プードル)の食事も用意してくれないか?」とお願いをした。
老夫婦は英語で話しかけたが、どうもウェイタ―は理解に苦労している。
身振り手振りを交えながらお願い事を伝えると、ウェイターは内容を理解したのか、プードルを厨房へと運んで行った。
厨房でエサを与えるものと思い、老夫婦はワンちゃんの帰りと頼んだ料理を待っていた。
しばらくして老夫婦のテーブルに銀製の大皿が運ばれてきて、ウェイターが蓋を開けると犬の丸焼きが姿を現した。
犬の丸焼きはどう見てもペットのプードルで、ソースで味付けされて周りには野菜が散らしてある。そして犬の口にはオレンジが咥えさせてあった。
精神的ショックを受けた老夫婦はその日の内に中国を発った。
そして、スイスに戻ると新聞社に、中国でペットが受けた受難のことを話したという。
この都市伝説はスイス人がペットを料理されてしまう被害者として登場し、伝説の舞台は一昔前は香港の場合が多かった。
香港で犬食・猫食が法律で禁止されてからは、都市伝説の舞台は中国へと変化した。
そしてスイス人が被害者になっているのは、犬食文化圏との因縁が深いためと思われる。
中国などの犬食文化圏では食用のためにセントバーナード犬が輸入されており、スイスがその輸出元となっている。
セントバーナード犬は成長が早く、大きな体躯を持つため、食肉用途として人気があり、精力強壮のために食されてきた。
豚や鶏よりも収益性が高く、肉は美味であるため、中国内では数千頭が食肉用に飼育されているといわれる。
そして、中国産の犬に種付けさせた後は、解体されて食肉として市場に流通するそうだ。
スイスでのセントバーナード犬は国を象徴する犬と位置づけられているため、他国で食肉にされていることについてスイス国民は強い憤りを感じている。
屠殺方法が残虐という点も非難の対象となっていて、多量のアドレナリンの分泌が肉をうまくするという考えの元で、生きたまま皮を剥ぐなどして苦痛を与えてから解体されるケースもあるからだ。
この現状に対してスイスの動物愛護団体は食肉用途としてセントバーナード犬の輸出を禁止するようスイスの国会に働きかけたり、中国大使館には食用としないよう嘆願書を送る活動を行っている。