私が学生の時に下宿していたアパートでの体験であります。
私の部屋は道路に面した二階にありました。
その夜も、いつものように道路側にある窓の正面に布団を敷き寝ておりました。
まだ脳の一部はどこか起きているといったような中途半端な状態で床に入っておりました。
そんな状態で暫くして、窓の外から二人の男性の声が聞こえてまいりました。
夜中の二時くらいだったと思います。
その二人の男性の会話を聞くと、一人がもう一方を制止しようとしているといった内容でありました。
私がしっかり起きていれば、泥棒かもしれないという用心から窓を開け様子を窺うこともあったのでしょう。
が、そこは半分寝ぼけていましたから、こんな時間に何だろうくらいにしか考えていなかったように思います。
「やめろって」
「うるせーなぁ」
「いいからやめろって」
「いいんだよっ!」
「やめろっ!」
二人の男性はこんなような問答を繰り返していました。
しかし、よくよく考えてみると、はじめ窓の外から微かに聞こえていただけの会話が・・・。
なぜか、すぐそこで聞こえている事に気付き、段々と意識が正常な状態へと戻ってまいりました。
「いいんだよっ!うるせーなっ!」
「馬鹿、やめとけって!こいつが起きちまうだろっ!」
それを聞いた瞬間、寝ぼけていた頭は一瞬で正常に戻りました。
すぐさま起き上がり、部屋の明かりを付け、テレビを付け、一呼吸おいて窓を開け外を見ました。
当然誰もいませんでした。
それもそのはずです。
最後の会話は完全に私の耳元近くで聞こえていました。