いざって時はやっぱりチキン

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

飲み会終わって終電に乗った時の話。
帰宅ラッシュとは逆方向だったんで、めちゃめちゃ空いてた。
しばらくしたら車両に俺とくたびれたサラリーマン風おっさんの二人だけになった。

俺とそのおっさんはお互いそれぞれ車両の両端のシートに座ってた。
おっさんは気持ち良さそうに居眠りしてた。
相当疲れてるか、酔っ払ってたんだろう・・・。

俺もちょっと眠かったから目を閉じた。
そして5~6秒経っただけで目を開けた。

おっさんの姿が目に入った。
おっさん、シートを俺の方へ一列移動してるように思えた。

結構酔ってたからか、そんなことどーでも良かったんで、また俺は目を閉じた。

また数秒でなんか嫌な感じがして、目を開いた。

今度は確かにおっさんがまた一列こっちの方へ移動してた。

スリでもやらかしたらとっ捕まえて駅員に引き渡してやろうと思い、俺は半目を開けて寝たフリをしてみた。

案の定、おっさんは俺が目を閉じたのを確認して立ち上がった。

こっちへ来るか?

そう思ったが、そうじゃなかった。

おっさん、そのまま車両の真ん中でクルクル回り始めたんだ。
で、回りながら「騙されないぞ~騙されないぞ~狸寝入りなんかに騙されないぞ~」ってつぶやき始めた。

さすがに俺もビビって、そのまま寝たフリをし続けた。
次の停車駅でドアが閉まる直前にすばやく立ち上がって逃げるように電車を降りた。

おっさんは追っては来なかった。
ただ、タクシー代も無くて2時間以上歩いて帰宅した。

あのままだと何かされたかもしれないし、ただの酔っ払いだったかもしれないし・・・。
ビビった自分に無性に腹が立ったが、人間っていざって時はやっぱりチキンなんだね・・・。

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