先日、親戚の葬式があった。
で、そこで検事をやってる叔父と久しぶりに会った。
通夜の席で叔父と２人で酒を飲んでいると、自然と話題は叔父が関わった仕事話になる。
叔父がしたのはこんな話。
広島のある個人経営の商店の店主が夜半にふと目を醒ますと、物音がする。
廊下に出てみると、全身黒づくめで小面の能面をかぶった「何か」にでくわす。
驚いた店主は廊下に立ててあったゴルフクラブを手に取り、その能面をめったうちにし階段から突き落とした。
果たしてその「何か」の正体は能面をかぶった空き巣であった。
殴打による骨折、そして階段から転げ落ちたときに頚椎を折って亡くなった。
店主は不法侵入に対する正当防衛が認められ無罪。
店主いわく。
「悪霊かと思った」
僕はその話を聞いて、ふうっとため息をついた。
「丸腰の相手を凶器を持って一方的にでも、正当防衛で通るものなの？」
「場合によるが、通る」叔父が頷く。
で、このあとの叔父の言葉に、俺は少し震えた。
「そもそも、不法侵入に対する正当防衛は法的に、幽霊や化物の存在を暗黙のうちに前提にしている。悪霊かと思ってやったのが無罪ってのはつまりそういうことだ」
