憑依された女の子

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

15年前に会社の女の子を夜中に送った時の出来事です。
昔のことですから記憶が曖昧な部分があると思いますがご容赦下さい。

確か、忘年会の時だったと思います。
私は会社から社用車を借りていたので、よく飲んだ時は酔いを醒ましてから車で自宅まで帰っていました。

経理部に属していたその子はずいぶんと酔っていたみたいで、私が介抱する役目を上司から言われて、仕方なしにその子を車まで連れて行き、私の酔いざましも含めて小一時間くらい休んでいました。

目を覚ますと12時を過ぎていて、相手の子を起こしましたが電車がないのでそのまま送っていくことにしました。
確か、その子は会社から相当離れた地域から通っていたので、自分が帰宅できるのは明け方くらいかなぁと思いました。

その子はT市に住んでいましたが、眠いだろうから近くまできたら起こしてナビをしてもらおうと、ひたすら運転してT市郊外まできたところで彼女を起こしました。

ナビをしてくれている彼女の様子がおかしいと気付き始めた矢先に、道は林道から森の道へと変わっていきました。
明らかにこんな先には民家さえないだろうと思われる場所を走っていたように思います。

彼女は淡々と「次は右へ」「十字路を左へ」とナビしていきました。
声が上ずっていて、ゆっくりと話す感じです。
私は気分でも悪いのかと思い、「少し休もうか?」と言いましたが、彼女は大丈夫と言い、ナビを続けました。

彼女が小声で呟くように「・・・許せない・・・許さない・・・」と言っていたのを聞き取りました。

私は「え?なんか言った?」と彼女に問うと「許さないんだよっ!!」と大声でそれも男性の声に近い声で叫んだのです。

その瞬間、車がガクン!と揺らいだので、私はブレーキを思いっきり踏み込みました。
2~3度、車体が揺らいで車が止まった時、ヘッドライトの先には2~30メートルで道路がなくなって“工事中”の看板が立っている情景でした。

私は彼女に怒鳴りつけるようにいいました。

私:「全然違うじゃねえかよっ!殺す気かっ!」

そう言うと、彼女はドス黒い目付きで前方を見たまま、瞬きもせず、小声で一言「・・・・ちきしょう・・・・」と言いました。

私は彼女の胸倉を掴んで、「何が“ちきしょう”だ!!!」と怒号しながら吠えました。

彼女の頭部がガクン!と揺らいだのですが、ハッと正気に返ったようで、泣きながら私に言ったのです。

私:「どこ走ってるんですかぁ、私の家と逆方向じゃあないですかぁ~」

わんわん泣きながら訴えていましたが、事の起こりを詳しく説明すると彼女はT市郊外に入った途端に、急な睡魔に襲われたそうです。

そして私がこう言ったそうです。

私:「家に着いたら起こしてあげる」

そう奇妙な笑顔で言ったそうなのですが、彼女の意識がなくなる寸前に街頭の明りに照らされた私の横顔を見た彼女は、明らかに私の顔ではなく知らない男の横顔だったそうです。

P.S.
あのあと、彼女の自宅に無事に送り届けたのは良かったのですが、彼女のご両親からとんでもないお礼(?)を言われてしまいまして、確かに自分も彼女もあのまま進んでいたらこの世にはいなかった訳ですが、そのあと「命の恩人」と彼女から思われてしまい、付き合い始めたのですが、まぁ、可愛かったのでいいでしょうと思っています。
現在、彼女は私の嫁さんとして活躍中です。

ここまで書くつもりなかったのですが、最後、つまらないこと書いて済みませんでした。
長々、読んで頂いてありがとうございます。

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