これは、私が実際に体験したお話。
私が今も住んでいるアパートは、ご近所から『廃墟』とまで言われるほどぼろいアパートで、夜になるとすごく不気味だ。
大学生になった今でも、夜遅くに帰ると恐怖を覚えるほど。
話は小学生の頃です。
私は、小学生のころ毎日いじめにあっていた。
その日も、リコーダーを頭に思いっきり打ちつけられたり、給食に毛虫を入れられたりなど・・・そんな仕打ちを受けた。
それから泣くのを止めようと、笑顔を作る練習をしながら帰宅した。
両親は共働きで、心配をかけたくなかったから、いじめのことも相談しなかった。
6Fにある自分の家には当然ながら誰もいない、暗くてシーンとした部屋・・・。
私は、リビングにあるテレビの電源を付けようと、チャンネルを探したがどこにもなかった。
仕方なく、テレビにある主電源を押した。
私の家のテレビが壊れていたのだろうか・・・電源を付けても映像が映るまでタイムラグがあった。
黒い画面に映るのは、当然ながら私・・・そして、変わり映えのない真っ暗な部屋。
しかし、いつもより早くに画面に動きがあった。
画面の正面に私の顔が映っているとすると、それは、私の左に現れた。
”それ”というのは、淡白い靄だった。
ゆらゆらと揺れている・・・。
最初、「もう点いたのか!」とわくわくしていた私だったが、一向に音声が入らないので、オカシイ・・・と思い始めていた矢先だった。
だんだん淡白い靄が人型を形作っていき、しばらく茫然と見ていると、完全に人になった。
70歳ぐらいで、しわが多くて、全部白髪で、目のあたりは黒くくぼんでいるおばあさん。
私は、そのおばあさんを知っていた。
いや、面識があると言った方がいいだろうか、そのおばあさんは私と同じアパートの8Fに住むおばあさんで、エレベーターで鉢合わせになったり、1Fのエントランスの様な場所で見かけたりした。
そんな、知った顔にも関わらず私は恐怖からか、ふるえと汗が出るのが止まらなかった。
なぜなら、そのおばあさんは先週の日曜日に8Fから飛び降りて、荼毘(だび)にふされたからだ。
しばらく、震えて何を言えない私に、おばあさんがしわくちゃの手を肩へとまわしかけて、「一緒に、くるかい?」と言ってきた。
私は、恐る恐る手を見て、画面に映っている顔を見た。
そこには、目を異常なまでに見開いたおばあさんの顔が映っていて、全てが、黒目だった。
「いや、いいです。」と、やっとの思いで言葉を絞り出した。
「そうかい、残念だねぇ・・・」と残念そうな顔をしてからおばあさんは消えた。
小学生でのいじめは1年~6年生までひっきりなしに続き、中学生でもいじめは続いた・・・。
しかもエスカレートしていって、心にも体にも一生言えない傷を負ってしまったので、たまに、あのまま一緒に行けばよかった・・・と思うことがある。