俺が高校の時の話だ。
俺らが通っていた高校は県内でも屈指の底辺高だった。
その底辺高の中で、俺はごく標準的な生徒で適度に学校をふけたりしながらも大した悪事にも手を染めず毎日をエンジョイしていた。
そんな有る日、暇をもてあましていると俺の友人田所が「まずうち(の近所)さぁ、幽霊屋敷あんだけど・・・肝試しして行かない?」と誘ってきた。
Aの話によると、あの家の近所に、ボケた老婆が孤独死して以来放置された廃屋がるのだという。
一緒に居た田所の後輩も「あー、いいすっねぇ」と乗り気だったので、そのまま学校をふけて老婆宅に侵入することにした。
原チャで老婆宅に到着、外観はどこにでも有るような一軒家だが外からでも異臭が鼻につく。
しかし、そんなことも気にせず進む田所と後輩、ここだけの話、こいつら実は出来てるらしい。
裏手に回り、壊れた雨戸から中に入ると、充満した悪臭がより一層鼻を突く。
学校からがめてきた懐中電灯で照らすと部屋中に生ゴミがまき散らかされている。
田所が言うには、婆さんがボケて部屋中に生ゴミをまき散らかせていたという、が臭いからしてずい分最近の生ゴミじゃないのかこれ?という匂い。
生ゴミ臭い部屋を探索していると、外から人が入ってくる音がした。
俺らは不法進入がバレルと警察沙汰になると思い、クローゼット中に隠れた。
中で息を殺しながら、外の様子を窺うと30代くらいの女が何かをブツブツ言いながら部屋中に何かを撒いている、暗くてよく分からなかったが、直感で俺はこの女が生ゴミを部屋にぶち撒いている犯人だと理解した。
その時、田所がつぶやいた。
「あれ、ここの家の嫁さんじゃん」
田所によるとボケた婆さんには息子が居て嫁ともども同居していたのだが、死ぬ寸前に別居したらしい。
部屋中に生ゴミをぶち撒いてる女はその別居した嫁その人なのだという。
10分ほど、息を殺しているとその女は出て行った。
俺らはやっとクローゼットから出ると、やはり先程に比べて生ゴミが増えている。
田所は、「幽霊の正体ってあの嫁さんかよ、まあボケた婆さんにいびられてるって噂だったし、婆さんが死んだあとも恨みがあったんだろうなあ」などとぼやいていた。
女が出て行って気が抜けた俺らだったが、隣の部屋で物音がするのに気づいた。
女がまだ出て行ってなかったのかと思ったが、さっきとは何か様子が違う。
俺はそーっと隣の部屋を覗いてみた、犬が生ゴミを食っていた。
なんだ犬かと、俺は安心して懐中電灯を点けて犬に向けた、その犬の頭の後ろにはもう一つ頭があった、まるで老婆のようだった。
そしてそのもう一つの顔は何か言っている、どうやら何か謝っているように聞こえる。
よく聞くと「もう意地悪しないから。生ゴミ食べたくない。ごめんなさい」と言っているように聞こえる。
その一方で犬の顔は嬉々として生ゴミを頬張っている。
俺が固まっていると、田所が「逃げるぞ!」と叫び、我に返った俺は脱兎のごとくその家を飛び出した。
俺が経験したのはここまでだ、田所によるとあの犬は婆さんの家で飼っていたインム君にそっくりだという。
その後、あの空き家も程なくして壊されたそうだ。