地元の『廃墟の館』

カテゴリー「心霊・幽霊」

オレの親戚の話です。

一昨年の夏、親戚がオレの住む地方に友達6人(男女3:3)で旅行にきました。
親戚とその友達は移動中に怖い話で盛り上がったらしく、会うやいなやノリノリで「ここらへんで心霊スポットとかない?」と聞いてきました。

そこでオレは地元の人はほとんど近寄ることがない『廃墟の館』を紹介しました。
そこは夏の間ヤンキーのたまり場にもなるので霊体験とは無縁だと思ったからです。

夜まではオレも親戚とその友達と花火をしたり遊んでいましたが、夜中の一時を回った頃いよいよ出発することになりました。
オレは子供の頃に親に冗談半分で連れて行かれ、吐き気や目眩、そして寒気等に襲われた経験があるため断りました。

ここからは聞いた話です。
森の中にあるその廃墟に続く道路には当然の様に明かりなどなく、ノリノリだったテンションが一気に下がるほど真っ暗だったそうです。
でも事前に「ヤンキーとかがいるかもよ」というオレの話を聞いて「向こうにはきっとオレたち以外にも人はいるだろう」ということで引き返すことなく現場に到着。

ですがそこにはヤンキーの影はなく、ただただ静寂だけがあったとのこと。
田舎なので月明かりが明るいはずなのですが森に覆われて月明かりも頼りにならない。
そこで車のエンジンをかけっぱなしにしてライトを点けておくことにしました。
でもそんな状況下ではさすがに怖くなって「帰ろう」という人もいたようです。

そんなちょっとしたパニックの中で親戚はどうも変にテンションが上がってしまったらしく、女の子にいいとこを見せたいという気持ちもあいまって、その廃墟の中に入ることを決めたそうです。

結局中に入ったのは男2人だけで残りの四人は外で待っていることに。
その廃墟は二階半のかなり立派なつくりで二階にはバルコニーもありました。

最初はビビリまくっていた親戚も持ってきた懐中電灯で照らしながら進むにつれ、恐怖にも慣れてきたらしくドンドン進んでいったようです。
中にはヤンキーのたまり場らしく当て字の漢字の落書きや下手なドラえもんがいたるところに書いてあり、それも恐怖心を紛らわしてくれたとのことです。

で、ほぼ廃墟の中を見終わりバルコニーに出て外の友達におちゃらけながら「何も出なかったよー」とかなんとかそんなことを言ったそうです。
でも車のライトがまぶしかったのと、車のエンジン音がうるさかったため外の友達のリアクションは全然分からなかったみたいです。

外に出て「○○君スゴーイ!勇気あるー」とか賛美されることを期待していた親戚を待っていたのは、うつむいて泣きそうになっている女友達3人と顔面蒼白になって慌てている男友達でした。

そのただならない雰囲気を察した親戚は「何かあったの?」と聞くと外で待っていた男友達はこう答えたそうです。

「オマエらがそこのバルコニーでこっちに向かって手を振っているとき、その後ろに白くぼんやりと光っている女の人が立ってたんだよ・・・」

その話を聞いたとたん車のエンジンが「ボンッ!」と音を立てて、月明かりすら入ってこないその廃墟前は親戚達の叫び声だけが響いていたそうです。

パニックになりながらも全員が車の中に逃げ込みエンジンをかけようとします。
でも当然のようにエンジンはかからずみんな体育座りのような姿勢で震えながら「ごめんなさい」や「すいません」を口々に連呼していたとのこと。

そして5分くらい経った頃、今度は何もしていないのにエンジンがかかったそうです。
そしてそのまま謝るというより叫びながら車を発車させ逃げ帰ったきたのです。

オレはこの話を聞いたときも相当怖かったですが、その後廃墟帰りの親戚に呼び出され、半狂乱の男女6人に理由も分からないまま真夜中の駐車場で説教を受けたことが一番怖かったです。

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