下半身もなく宙に

カテゴリー「心霊・幽霊」

知り合いに変わったやつがいる。

小学校時代からの友人で、現役の住職をやってるやつ。
私自身は霊感なんてこれっぽちも持ち合わせていないのだが、こいつのせいで何回かありえない現象にあっている。

大学生時代、みんな免許取り始めてうきうきしてた時分の話です。
季節的には、夏。
夜遊びしてて、ふとある話題から怪談話に移っていった。

私自身は1ミリも信じていないんだが、女の子もいたこともあり大いに参加。
都市伝説の話とかしてました。

むろん住職(学生時代は髪があり出家はしてなかった)もがんがん話しをして盛り上がり、やはり行き着くところ、ミステリーツアーということになって、5人で夜中に車で出発。
場所は関西地方で有名な幽霊トンネルに行くことになりました。

山中を目的地にむけて車を走らせること数十分。
街から離れ、街灯もろくになく、対向車すらなくなってようやく目的地近くまできたときに、運転手Aが突然のブレーキ。

あまりの急ブレーキに頭にきた。

私:「急ブレーキかけんなこのへたくそが!」

A:「・・あれ・・あれ・・」

うわずった声で、前を指さしたんですよ。
で、前方を見ると、赤い光がゆっくり円を描くようにうごいている。。

私:「んん・・?工事かなんかちゃうん?徐行でいけびびりすぎ」

A:「ん・・・あ・・うん」

声にならない返事でゆっくりと赤い光にちかずいていきました。
すると後ろに座ってた住職が「あっ・・」と一言。

案の定私の予想道理・・・。
警告灯を持ったガードマンらしき人が立っていた。

運転しているAが車をゆっくりととめたので、なにげなく私は窓を開けて「工事ですか?道通れます?」と声をかけた。

ガードマンらしき人は何も答えず、こちらをちらりとも見ないで無表情のまま。
警告灯を道路の先に向けて”行け”と突然壊れたおもちゃの様に前後に激しく振りはじめた。

私:「いこうぜ」

A:「・・・・・」

私:「?早よいかんかぁ」

A:「・・・・・」

無言のまま急発進。

1分も経たないうちに、私と住職以外がワンワン泣き始めた。
Aにいたっては「ぃぃぃぃぃぃぃぃ・・・・・」と半分悲鳴みたいな声でうなっている。
あまりのスピードと乱暴な運転に驚いた私はAにいった。

私:「ちょっと止めるかスピードを落とせあぶない」

A:「ぃぃぃぃぃいいいいいいいぃぃぃいいいぃぃ・・・」

私:「事故るだろうがっ!!!」

Aの頭を力いっぱい叩き、ようやく何処かの駅前のちょっとした広場みたいな所で休憩。

私:「Aよお前何をしとんねん?」

A:「・・・・・・・・・・・・・」

住職:「まぁまぁあれはしゃーないよ」

私:「なにが?なにがしゃーないん?」

住職:「まぁ大丈夫ちゃんとお清めするから」

私:「?なんかでたん?」

全員:「・・・・・・」

私:「なぁなんか見えたん?なぁなぁて・・」

住職以外は私と目も合わせようとしない・・・。
ちょっとムッときたのでAと運転を代わるから「今すぐ戻るぞ!!」といったところ、3人に全力で泣きつかれて「頼むから朝までここにいよう」とお願いをされた。

訳を訊いてみると・・・。

私が話し掛けた相手というのが、手首から先が無く、下半身もなく宙に浮いていた。
で、私が話しかけた途端、大声でゲラゲラ笑い始めて激しく手招きし始めたらしい。
駅前に到着するまで、ずーと笑い声がしていたそうです。

私:「あほくさ!朝なって確かめたらわかるやろ。帰り運転するからな」

住職:「なぁなぁお前さどっち向いてた?」

私:「どっちて・・助手席座ってたから左や」

住職:「左走ってて左に話しかけたてどこ工事するん?」

私:「どこでも工事くらいするわな」

住職:「左てガケやで、お前のそういう鈍いとこすごいな」

翌朝来た道を運転して帰りましたが、みんなにこう聞きました。

「あっれ?きのうの工事どこでやってたけ?わからんわ」

車内再度パニックでした。

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