部屋にいる全身白い裸の男

カテゴリー「心霊・幽霊」

大学の友人Kは学校の近くのどうしようもないおんぼろアパートに下宿してます。
私も一度、飲み会の後電車がなくなったので泊めてもらったことがあります。
そのときKは「この部屋幽霊が出るねん」と笑って言いました。
何でも、夜誰かが部屋の扉を叩いたり引っ掻いたりするのだそうです。
ところがドアののぞき窓から外を見ても、誰もいない。
そういうことが毎晩のようにあるそうなのです。

別に実害は無いので最近は慣れて気にならなくなったとのこと。
彼が笑いながら言ったこともあり、私は彼のその発言を信じませんでした。
その晩、実際に幽霊が出たかどうかはわかりません。
酔っていたので私は比較的早く寝てしまったからです。

翌朝Kが言うには、やはり昨夜も幽霊はやってきて、外から部屋の扉を一晩中叩いたり引っ掻いたりしていたそうです。
私は今まで霊体験と呼べるほどのことを経験したことが無いので、せっかくの機会を逃してしまったことを後悔しつつKの部屋を去りました。

それから2ヶ月ほど経った日(実はおとといですが)Kが私の部屋に泊めてくれと言ってきました。
家にやってきた彼はひどく浮かない顔をしてました。
何かあったのかを尋ねたところ、苦笑しながらKは「もうあの部屋引っ越すわ・・・」と言って、事情を語りました。

Kも初めてその扉を叩く音を聞いたときは、ビックリしたらしいのですが、霊の存在を頭から信じていなかったので、隣の部屋から聞こえてくる音か、ねずみか何かが天井か壁の間などで動き回ってる音だと解釈したとのこと。
私に「幽霊がいる」と言ったのは、私を怖がらせるためだった。

ところが、今から3日前、私たち二人の共通の友人TがKの部屋にはじめて泊まりにきたそうです。
Tは俗に言う霊感が強い人で、よく霊を見たりしている人でした。
二人はTの買ってきたビールを飲みつつ夜中まで起きてたそうですが、急にTの顔色が悪くなり始めたので、Kは飲みすぎて気持ち悪くなったのかと思い、「大丈夫か?」と聞いたところ、Tは「おまえこんな部屋によく住んでられるな・・・」と言い出したそうです。

ちょうどそのとき玄関の方で「トントン・・・カリカリ・・・ガリ・・・トン・・・」という音が聞こえてきて、Kはその音のことだとおもい、「ああ、あの音か。なんか幽霊が訪ねてきてるみたいで恐いやろ。けどネズミかなんかやと思うで」とTに言ったそうです。

ところがTはガタガタ震えながら玄関の扉を指差し「ネズミじゃねぇよ!そこにいるじゃねえか!。」
Tが言うには、全身白い裸の男が部屋の内側から扉を掻き毟っていたとのこと。
二人はともかくこの部屋から出ようということになり、玄関の扉には近づきたくないので窓からベランダに出て雨どいをつたって下に降り、そのまま近くのファミレスで朝まで過ごしたそうです。

Tの言うことが本当なら、Kには見えなかったとは言え、しばらくそんな部屋で暮らしていたKの神経の太さに感心してしまいます。
霊の存在を信じていなかったKですが、Tの取り乱しようをまじかで見るとさすがに気味が悪くなったのでしょう。
新しい部屋が見つかるまで私を含めた友人の部屋に泊まることにしたそうです。

まったく迷惑な話です。

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