事故物件である・・・。

カテゴリー「心霊・幽霊」

そろそろ時効だろうということで書かせてもらおうかな。

場所は時代劇とかでよく出てくる東京の下町だ。
友達の家が結構な地主で、大体の土地にはアパートを建てた。
部屋数もそれなりあって、そうするとどうしても出ちゃうんだな。
事故物件てやつが・・・。

この話もその一つなんだが、当時俺は高校出てぶらぶらしてた。
家はそれなりの家系というか、両親兄弟ちゃんと学歴もあるもんで、俺だけが俗に言うできそこないってやつだった。
居場所がなかったんで、高校を卒業と同時に家を出た。

当然金も無いんでなんとか安い部屋を探して、高校が一緒だった友達のところに相談に行ったんだ。
そいつをAとする。

Aは、事情を話すとすぐに心当たりを思いついたようだったけど、それでも少し考えてた。
それから親に訊きに行って、戻ってきた。

提示された条件はこうだ。

事故物件である・・・。
最低3ヶ月、できれば半年は住んでほしい。
家賃は2万で良い。
更に少しだが謝礼を払う。
3ヶ月以上住んでくれれば、良い部屋を格安で世話する。
その際の引っ越し代も持つ。

すごいだろ?
当然、一も二も無くOKした。

早速部屋に連れてってもらった。
4階建ての4階。
エレベータは無し。
1フロアに3部屋あって、角部屋1DKで押し入れの他に同じくらいの大きさの収納まであって風呂トイレ別。
クリーニングも済んでいて綺麗なもんだった。

不動産屋が来るまでの間、事故の様子を聞いた。

OLの首つりだったらしい・・・。。
あまり綺麗な死に方では無かったみたいだキッチンで、釣り式の蛍光灯のコードを使って首を吊ったらしい。
天井抜けないの?って訊いたら、直天井で上は屋上だから頑丈なんだってなことを言っていた。

不動産屋が来て指示される通りに途中の文房具屋で買った判子を突いた。
この時は一人前になったみたいで嬉しかったんで、事故物件だってのも忘れてた・・・。
その後友達が一人暮らしのお祝いだって言って近所のイトーヨーカドーで布団と照明を買ってくれた。

それから別れ際、おかしな事があったら、思いつめたりしないですぐ相談しろと言った。
特に家ん中で自殺とか止めてくれって笑いながら。

部屋に帰って、生活の支度をして、すぐに日が暮れた。
近所のコンビニで弁当と漫画を買って帰った。
玄関のドアを開けて暗い部屋に入る。

その時が最初だった。

部屋の中に人がいるような感じがあるんだよ。
気配っていうのかな?
それも後ろから肩越しに誰かに覗きこまれてる感じ。
首の皮がぎゅぅっと縮まる感じ。
靴脱ぎ捨ててダッシュで壁のスイッチまで走って電気を付けた。

当然誰もいない。
この時初めて、『余計なこと聞かなきゃ良かった!』と後悔した。
ただ、電気をつけて、落ち着いたらもう気配みたいなものは感じなかった。

とりあえず奥の部屋にはまだ照明が無かったんで便所と風呂場の電気も点けたままその日はキッチンの例の場所からなるべく遠い場所で寝た。

朝になって、明るい光の下で部屋見回してみても、おかしな感じはしなかった。
ホントに何もない、ガラーンとした空間があるだけ。
その日は、もう一部屋用の照明や机を買う事にして、早めに家を出た。

当時できたばかりのスーパービバホームで安い天井直付けの蛍光灯とカラーボックスを買って暫くテーブルを物色したけど、あまり気に入るものが無なかったんで、ネットで探す事にした。
そこで、PCが必要なことに気づいたけど、家に取りに行ったところでPCなんぞ持ち出させて貰える訳も無く、またAに相談に行ったらとりあえずAが使ってないノートPCを貸してくれる事になった。

そこで、「大丈夫か?」と聞かれた。
当然”あの瞬間”のことが蘇ったけど、昨日の今日で泣きいれるのもあまりに恥ずかしく、「まあ、ああいうのは気の持ちようだからさあ」とか言っておく。

Aも「そうだよなー。余計な事話しちゃったからさ。念のため」とか言って笑ってた

PCを持って帰ったものの、ネット回線が来てないんで、携帯でとりあえず手配だけして、後はまた照明を取りつけたり、カラーボックスを組み立てたりしてるうちに日が暮れた。

前日、風呂に入らなかったことに気づいて、風呂に入ることにした。

風呂場の電気をつけて風呂場を開ける。
シャンプーみたいな香料の匂いと、異臭。
二三日風呂入ってないと、頭臭くなるよな?アレを数倍きつくしたような・・・思わず、うっとのけぞって風呂場を見まわすと、普通のユニットバスなんだけど、なんだか隅々がちょっと汚い。
キッチンとかがすごい綺麗だったのは対照的な感じ・・・。

臭いはこのせいかな、と思ってさっさと風呂に入る。
頭を洗ってるその時、またあの感じ。
それと背中をシャワーの湯以外に、布みたいなものが滑っていく感触。
物凄い恐怖で頭も顔も泡だらけなのも構わず目を開けて振り返った。

当然誰もいないし、何もない。
けど、風呂場のドアがすこーしだけ開いてた。

風が吹きこんだってことかぁ、と声に出して、無駄に力を込めてドアを閉める。
全開で目を開けたまま泡を流して、身体を拭く。
その間、作業はすべて風呂場の隅。ビビりが収まらなくて鳥肌が引かず、視界の外に空間を空けておきたくなかった。

風呂を出て換気扇をつけて、とにかく急いでと奥の部屋に移動。
なんで開いたのかなー、陰圧とかかなー・・・とかいちいちしゃべりながら服を着た。

着替えが済んで体が温まると、どうにか人心地ついて漸く落ち着いた。

「俺も小心者だなー」とか言いながら、壁に寄り掛かった時、ふと部屋の奥にある押し入れが目に入った。

開いてる。

襖と柱の間に3センチくらいの空間がある。

一人暮らしを始めたばっかり、家具はカラーボックス一個。
荷物は登山用のバックパックひとつ。
押し入れに入れるものなんかない。
無いから開けも閉めもしない。

開けたのは記憶にある限り、朝ホームセンターに行く前に収納をチェックした時だけ。
しかも明確に閉めた記憶がある。

襖の滑りが悪くて、そういうのも買わないと駄目か?
・・・と思いながら閉めたからよく憶えている。

ここで、誰か人が居るのか!?と思い至る。

暫く空き家だったんだろうから、人が忍び込んで住んでたとか、あってもおかしくない!と、理由が解ったような気がして、星一徹ばりの勢いで襖を開けた。

ベニヤで囲まれた空間だけ。
天袋も確認する。

当然いない。

腑にはおちなかったけど襖を壊す勢いで空けたり、押し入れの上段に乗って天袋を覗きこんだり、と身体を動かしたせいか、怖いって感覚は大分薄くなってた。
勢いよく閉めた反動で開くこともある訳で、さっきのもそうだったのかも、と今度は丁寧に襖を閉めた。

丁度その時、携帯が鳴った。

電話はAからだった。
昼間貸したノートPCの付属品が見つかったけどどうする?というようなことだった。
聞きなれた友達の声を聴いたら、意地がふつふつと湧いてきて、目一杯元気な声で相槌をうつ俺。
しばらく話してると、Aが唐突に沈黙したんで、俺が「どした?」と訊くと、「何かあったのか?」と聞かれた。

やっぱりさっきの衝撃が抜けきっていなかったらしい。
声がやたらに遠いとのこと。

ムキになって、「何もねーよ!」と言い返したら更に考えるような間があいた後「とりあえず届けるわ、今からそっちいくから」と言って電話は切られた。

おせっかいなやつだなーと携帯を閉じたとき、壁に立てかけたバックパックが目に入った。

なんかおかしい。
影が。

家庭用の照明の光量なんてたかが知れてんのになんであんなにくっきり、太陽光の下みたいにべったり影が落ちてんだ?
影のところの畳の目なんて見えないほど濃い。
いや部屋もなんか薄暗くないか?

その時「ふぅうー」って溜息みたいな音がした・・・真後ろというか耳元で。

硬直する俺。
空耳か?
自分の溜息かも?

いやいやいくらなんでもわかるだろ自分のくらい。
俺してねーし。

じゃあ空耳だとしたら、なんで生臭いの?
俺部屋の真ん中で電話してたのに、なんで真後ろに遮蔽物を感じるの?

もうほとんどパニクッてたと思う。

その瞬間「ビン゛ボン゛ッ」と轟音で玄関のチャイムが鳴った。

気配が消えた。

よたよたしながら玄関に向かうとAが居た。
余りにも早いのに驚いて時計見たら、電話切ってから既に15分以上経ってた。

Aは暫く黙って俺のこと見てたけど「大丈夫か?住んでくれって言ったけど、無理するなとも言ったよな?」って聞いてきた。

脂汗もかいてたし、顔色も普通じゃなかったんだと思う。
とりあえず、Aに上がってもらって中で話すことにした。
キッチンも、奥の和室も、もうおかしな感じはしなかった

何もない部屋に座って、二人で缶コーヒー飲みながらAが「思い込みでもなんでもかまわない、とにかく言え」って言うんで気配がすること、風呂が臭かったこと、襖の立てつけがおかしいことを話した。

ただ、まだ意地が残ってて、「全部思い込みで片付くことだからさ。ほら俺色々聞いてるじゃん?」とか自分でフォローする。

Aは黙って立ち上がって、「建具は取り替えたんだがな」と言いながら襖を開け閉めする。

次に風呂場に行くと臭いを確認して「今は特に臭わないが、臭かったなら配管かもしれないからすぐに配管掃除手配する」と言ってくれた。

「それなら、風呂も結構汚れてるみたいだよ?」と便乗する俺。

隅々の汚れを指し示すと、ハウスクリーニングも一緒に手配してくれた。
風呂はクリーニング業者が手を抜いたんだろうとのことだった。
Aは不快な思いをさせて悪かったと謝った後、「いつでも止めていいから」と言って帰って行った。

翌日、ハウスクリーニングや配管掃除の業者が来た。
掃除業者は確かにやった、作業前後の写真もある、と息巻いていた。
手抜きじゃないかって、言われた時は怒ってたけど、Aに聞いたらAのうちとは長い付き合いの業者さんだって言ってたし、若い俺らに対する態度も丁寧で、手抜きをするような人には見えなかった。

カメラ入れてチェックしたところ、配管はやはり相当汚れてた。
油ものとかを大量に流したりしなければ短期間でこんなに汚れるのはちょっと考えられないと言っていた。

まあ結果として配管も、ユニットバスも、掃除の後は恐ろしく綺麗になった。
この3日間で起きたことは既に相当効いてたが、ここまでしてもらってってのがあったんで、やっぱり、”やめさせてもらいたい”とは言い出せなかった

その後数日は何事もなく過ぎた。
日に日に整っていく生活環境が嬉しかったし、ネットが開通してやることも増えて、バイトも決まってって感じで順調だった。
ただ、電気が消せなくなった。
意外とトラウマになっていたようで、風呂トイレ含め自分がいる間はすべての電気を点灯。
いない間もキッチン(玄関入るといきなりキッチンなんで)の電気は常灯。

そうして、日が過ぎて、バイト先が歓迎会やってくれることになった。
歓迎してもらって、飲んで気が大きくなって帰った俺。(すいません、未成年○酒ですが、ご時世ですんでご勘弁を)

全部気のせいだったような気がして、その日は普通に電気を消して寝た。

で、うとうと、とした時。
突如キッチンの天井から「ズドォン!」と轟音が!

飛び起きる俺!

なんか普通じゃないという認識だけがあった。
パニックになりながら和室の電気をつける。
もう一回、キッチン天井から轟音。

大急ぎでキッチンに行ってそっちも電気をつける。
何もなかった当然天井も無傷。
でも音の聞こえたあたりは・・・場所的につまり・・・。

酔いも何も吹っ飛んでガタガタ震えてると、和室で何かがきしむような音がした。
軋むような、擦れるような音だった。
振り返ると、押入れの襖が、少しだけ開いてた。

もう、閉めに行く度胸なんてなかったんで、キッチンと和室の間の敷居のあたりでガタガタ震えてた。
半分意識は飛んでたんだと思う。

次に気づいたときはもう朝だった。
それ以来、電気を消さない習慣を徹底するようになった。
風呂は開けっ放しで(湯気漏れまくり)換気扇かけて大音量で音楽もかけて入るようになった。

それでも、時々、気づくと襖があいてる。
PCしてるときにキッチンで、かすかにカチャっ・・・て音がして・・・見に行くと、風呂の扉が開いてるってことがあった。

ちなみに、風呂の扉も、襖も立てつけはおかしくないことラッチボルトが完全にかかることはAが確認してくれた。

約束の3ヶ月が過ぎて、もう半年持たない自信があったんでAに相談した。
Aは、快く次の部屋と、引っ越し手配してくれた。
まあ荷物なんてほとんどなかったけど。

その後、その部屋は更に半年で3人住人が変わった。
最後の住人が出て行ったあと、Aからクリーニング手伝ってくれないか?って頼まれて(業者が嫌がったのと、住んでいた期間が短くて汚れがタカがしれてた)部屋に入ってやっぱりな、と思った。

和室の鴨井(キッチンとの間の引き戸の上)に厄除けの札が貼ってあった。
押入れの中にも。

Aに住人に伝えてるの?って聞いたら、「伝えていない、住んでもらった意味ないだろ」とのことだった。

ということは、同じ目に遭ったってことだ。
それから数年間、もう面倒になったらしく、部屋は倉庫代わりに使われてた。
今はどうなっているのか、わからない。

以上です。

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