小さいころから一人部屋でさびしかったんだけど、そんな気分マックスのときには、よく壁際に設置されたベッドと壁の隙間から出てくる手があった。
別に怖くもないし、手を握って寝てくれたりした。
両手が出てきたときは、見たこともない指遊びをして笑わせてくれた。
でも、そんなことが続いたある日、両手の他にその間から、懸垂のような形で黒髪と片方の目が見えた。
女の人みたいだった。
初めてゾクッとした。
でも何をするでもなく、いつものように布団かぶって、その中で遊ぼうと言うみたいに毛布をパタつかせてたので、自分はその頭と手を含めて、いつものようにベッドに入り込んだ。
始めはその顔を意識しててドキドキしてたんだけど、いつもみたいな遊びをし、いつものようにおねむになった。
そんな自分の手をその人は握った。
でも、その日は少し違った。
眠るまで握っていてはくれなかったのだ。
ずるずるっと引っ張られてるみたいに、その人はベッドの隙間に引き込まれていって、それ以来見ることはなかった。
一目見に来てくれたのか、誘い込もうとしたのか、そしてどこに行ったのか。
自分には分からないけど、今思えば怖かったし、少し寂しかったのも事実だった。