それが俺には最後の言葉だった

カテゴリー「心霊・幽霊」

別に怖くはないけど実話です。

二年前、父が他界した。
糖尿病による心筋梗塞だった。
その一週間前に、俺は妻と子供の顔を見せに実家に行ったんだ。
父は足腰が弱っていて半寝たきりの状態だった・・・そのため子供と出掛けたことがなかった。

いつもあまり長い時間は実家に居なかったので、子供は父が怖かったらしく抱っこすると泣いていた。

しかし、その日は違ったんだ。
泣くどころか笑顔で髭を触り、捕まり立ちをしだしたばかりなのにちゃぶ台に捕まり踊っていた。
父も嬉しかったのだろう。
目を真っ赤にして笑っていた。

いつもは何も言わないのに、「来週またこい」と言った。
俺は嬉しかった。

妻も初めての言葉に驚きつつも嬉しそうだった。
それが俺には最後の言葉だった。

一週間後の仕事中、姉より携帯に連絡がきた。
父が風呂で気を失っていて、病院に運ばれたとのこと。
姉の泣きながらの電話だった。

俺は覚悟を決め病院に向かった。
その途中で妻に父が「タオレタ」と伝えた。
信じたくない気持ちもあり、妻には待機するように言った。

しかし、病院に寝ている父の顔には白い布がしてあった・・・。
言葉にならなかった・・・・・・。

その時妻から電話が来た。

妻:『お父さん、大丈夫?◯◯ちゃん(子供)が踊りながらバイバイって喋ったんだけど・・・』

俺:「・・・・・・・・・・・・」

妻:『それと、そっちに行こうと思ってるけど、家の鍵が無くなった』

俺:「・・・ゆっくりいいよ。俺も間に合わなかった」

その後、妻と子供が病院に着いたのは二時間後だった。
三十分あれば着くのに。
どうやらタクシーとトラックが正面衝突して渋滞していたらしい。

後からニュースで知ったが、事故は妻達が家を出ようとしていた時間帯のタクシーだった。
そして、無くした家の鍵はなぜか子供が持っていたらしい。
なんでも、鍵をかけずに行こうとしたら、子供が泣き出して行けなかったらしい。

妻:「あの時、◯◯ちゃんはおじいちゃんと話してたのかな・・・・・・?」

俺は鼻水垂らして泣いた。

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