小学生の頃、学校帰りに毎日、近道で他人の家の庭を通って帰っていた。
その日も普通にその家の庭を通ろうとしたら、その日はその家のおばあちゃんが家の前に立っていて、「今日は庭を通っちゃダメだよ」と言われた。
いつもはニコニコしながら「こんにちは~」って挨拶してくれるのに、その日は無表情だった。
不思議に思って、家に帰ってからそれを母親に話した。
母親も、「なんだろねぇ」なんて大して気にも止めてなかった。
でもその日から、次の日も次の日も、一週間くらいおばあちゃんは庭を通らせてくれなかった。
数日後、母親が「あんた、今日もあのおばあちゃんの家の庭を通ろうとした?」と聞いてきた。
わたしは「したよ。でもこの前からずっと通ったらダメって言われてる。」と答えた。
母親の顔が青冷めたのがわかった。
「どうしたの?」と聞いたら、母親は、「あの家のおばあちゃんね、あんたが最初に庭を通っちゃダメって言われた頃に、あの家で自殺してたんだって・・・。さっき近所の人が首吊りしてるのを発見したって、電話が来た」と。
そのおばあちゃんは、ずっと一人暮らしでとてもさみしかったらしく、遺書を遺して首吊り自殺していたらしいです。
なぜおばあちゃんは、わたしに庭を通らせてくれなかったのかはわかりません。
母親は、「子供に自分の姿を見せたくなかったのではないか」と言っていました。