四十九日

カテゴリー「心霊・幽霊」

人は死んだらどうなるか?について私の体験に基づく話。

数年前まで訳あって祖父と、小型犬と三人暮らしくらしをしていた。
江戸っ子の祖父とは毎日喧嘩ばかりしていた。
小型犬は祖母が亡くなってから気落ちしてしまった祖父のために飼った。
小型犬が来てから祖父は溺愛し、かなり甘やかしていた。
でも微笑ましかった。

70を超えるのに腕立て伏せをしたり、ゴルフや麻雀が大好きだった。
腕立て伏せをしているのを見た三日後、祖父は突然亡くなった。
肝硬変による大動脈流破裂。
吐血で苦しみながら輸血し続けられ顔がパンパンに膨れあがり別人だった。

母子家庭に育っただった私を、祖父母が面倒みてくれた。
祖父は私にとって父親に等しかった。

母は訳あって離れて暮らしていたが、祖父が亡くなりまた一緒に暮らす事になった。
祖父と住んでいた家は賃貸で、契約の問題で49日を待たずして引っ越さなければならなかった。

気は引けたが祖父母の遺品は最低限に、家中の物を処分せねばならなかった。
お通夜の前日から作業をはじめた。

祖父は救急車で運ばれ、病院で亡くなりそのまま互助会の霊安室に眠っていた。

忘れもしないお通夜の当日AM2時。
母と祖父の思い出話をしていた時の事。
突然天井から「ズリズリ・・・」と這いずる音がした。
私が母より先に気づき二人共しーんとなった。
そして地響きがする程のドーン!という人が落ちたような音が玄関の方からした。

何事だと思い玄関へ向かうと、ドアの磨りガラスの向こうには確かに誰かがいた。

外玄関の横には物置があるのだが、その誰かは勢いよくバタン!と物置のドアを開け、処分しなくてはならない祖父母の荷物等が入ったゴミ袋を漁っていた。

夜中にこれだけ騒がしくできる泥棒だから絶対頭がおかしい奴だ!と思った私はすぐ警察に電話をし、何故か「コラー!」と怒鳴っていた。

いつ家に侵入してくるかもしれないと命の危機も感じた。
ああいう時って心音が耳に直接聞こえるんだね。

で、警察来て物置や、人が落ちた形跡等見てもらったけどなにもなく、警察のうちの1人が青森出身だとかで真面目な顔して「おじいちゃんなんじゃないかなぁ」と言い残し帰られた。

地形的に、家は袋小路になっておりうちともう一軒のみで、袋小路に入るにはうちの横を必ず通る地形。
なのでもし家族以外が通ると足音でわかるし、寝てても起きてまずうちの犬がワンワン吠えまくる。
私が見た玄関にいた人はじいちゃんと思う方が自然だった。

その後とくになく無事告別式も終え、引っ越し作業に追われる毎日だった時。
うちの犬が遺影に向かって吠えるようになった。

元々古い家だったけれど、引っ越しが決定になってからの家の老朽化は凄まじかった。
床は腐り、あらゆる場所が軋み、風呂場には草まで生えた。
掃除をしなくなったとかではなく、まるで家が生き物で役目を終えるのを待つようだった。

なんの根拠もないけれど、私が感じたことは、死に方は関係なく霊という存在は、生前とは全く異なった姿をしているのでは?という事。

そして生前の記憶や性格とは違う、なにか全く別の存在になるのかも?と思ったのは、あの夜あそこにいたのは紛れもなく祖父であり、祖父でないものだったからだ。

祖母もまた、亡くなってすぐ家に来たが祖母とは微かにわかるも、全く違うものになっていた。
眠っているような安らかな最期だったが、亡くなり方は関係ないようだった。

身内等が死んだら守ってくれる・・・とか思いたいし、そうなのかなと思う時はある。
しかし亡くなってしばらくはどうも姿も違うし、全く違うなにかになる様だ。

四十九日までは。

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