オカルト肯定派の知人の話。
彼が言うには巷で落武者とか兵隊の幽霊を見たと言う声を聞くが鼻で笑ってしまうと言う。
古来より、この世に未練がある者が幽霊になるのであって覚悟を決め戦った者が死して彷徨うはずは無い。
幽霊となり泣き言を言う落武者や兵隊など「ヘタレだ。」それが彼の見解であった。
彼は現役の自衛官。
彼は新撰組の話をしてくれた。
当時、世界最強の白兵戦集団であった新撰組。
その副長、土方歳三は腹を切らせた部下が幽霊となり、墓地近隣の人々を怖がらせると言う話を聞き「生きて新撰組に恥をかかせ、死しても尚、新撰組に恥をかかせるか!」と激怒し部下の幽霊を切るつもりで刀を持って墓の前で夜を明かしたと言う。
ちなみに、歳三に恐れをなした隊士の幽霊はそれ以後出なく成ったそうだ・・・。
そんな彼が腹の底から恐れた体験。
ある日、彼は隊舎(学生者舎)で見慣れぬ幹部自衛官(旧軍士官)に服装の着こなしに付いて指導(怒られた)された。
大した事では無かったがその幹部自衛官は彼を指導した後、懐かしそうに隊舎を見回した後に彼に言った。
幹部自衛官:「ここには今、A一尉(大尉)がいるな。奴と俺は同期なんだ・・・」と言うと、彼の目の前ですぅ~と消えてしまったと言う。
驚いた彼は慌ててA一尉のもとにおもむき事の次第を報告した。
A一尉は黙って彼の話を聞いた後に彼が見た幹部自衛官の特徴を聞いた。
彼が見たままを報告したらA一尉は「そうか・・・じゃ駄目だったのか・・・しかし、何が悲しくてこんな場所に戻って来たんだ・・・」と、後に彼はA一尉から事の次第を聞いた。
彼が見た幹部自衛官はその時、訓練中の事故で行方不明になっていたと言う事。
A一尉とその自衛官は自衛隊に入って最初の年(最も厳しい時期)にこの隊舎で過した事・・・。
辛く悲しいばかりで楽しかった事など何一つ無いのに、なぜココに帰って着たのか・・・。
それを聞いて彼は、死してこの場に戻る先輩の幽霊に言葉に出せない恐怖を感じたと言った。
私は質問した・・・。
戦えば生あるモノに対して誰にも負けないであろう彼が、なぜ、そのありふれた幽霊にそれほどの恐怖を感じたのかと・・・。
彼は答えた「今の俺なら・・・妻子のもとに真っ先に帰る。だけどあの人にとって帰る場所はあそこしか無かったんだ。君には理解できないだろうけど・・・」と言った。