高校の時の話。
通ってた高校は交換留学があって、行き先はNY。
お世話になった家は工場勤務のパパと、学食でパートのママ、同じ年のジェニファーと3歳年下の妹、10歳年下で小学生の妹がいて、毎日が賑やかでユーモア溢れた楽しい家庭だった。
自分は英語が得意な方だったけど、やっぱ辞書無しでは分からない事も多かった。
パパがボランティアでやってる消防団の仕事で、夜いなかった時の話。
文化の違いをお互いに挙げてみんなで盛り上がってた。
一番下の妹はもう寝てて、話が段々と怪談話に。
日本にはコックリさんってのがあってねって言ったら、
やってみよー!って盛り上がって、さっそくセッティング。
ママはロウソク、ジェニファーはコイン、妹は紙にアルファベッドを書き込んで、ロウソクに火をつけて電気を消して、準備万端。
ママと妹が向かいに座って、妹の隣に自分、少し離れたソファーにジェニファーが座ってた。
インチキがないようにママと妹は紙を見ずにお互いを見てるようにし、コインが止まった文字はあたしがノートに書き写してからみんなに見せるって感じで進行していった。
最初はふざけた妹がわざとコインを動かしたりしてママに怒られたりしてたけど、段々二人がマジ顔に。
お互いで、「アンタ動かしてる?」なんて確認しだした。
そんな事を言ってる間にもコインはスルスルと動いて、あたしが一文字書き留めるとまた動いてを繰り返した。
鳥居マークでコインが止まって、ママと妹があたしの書いた紙に注目した。
痛い。
ごめんなさい。
後悔している。
帰りたい。
死ぬのは間違い。
ここは地獄。
そんな事が書いてあった。
ママも妹もあたしもガクブル。
「これ、誰なんだろう?」
聞いてみようぜって事になって、再びママと妹がコインに指を置いて見つめ合った。
「あなた、誰なの?」
ママが小さく呟くと、コインが動き始めた。
チラリとママと妹の顔を見ると、凄く怯えた顔で、二人ともオーマイガッとかアンビリーバボーって何度も呟いてた。
ヤバイ。
こりゃマジだったかって今更気付いて、あたしも凄く怖くなった。
単語と数字、そして、ジェンは知っている。
家族に伝えて欲しい。
という言葉を指してコインは鳥居に戻った。
コインもあたしが書く手も止まったのを感じて、ママと妹がこっちを見て、すごい声で叫んだ。
びっくりして、あたしは椅子から転げ落ち、ソファーに座ってたジェニファーが慌てて駆け寄ってきた。
妹は何か叫びながらコックリさんの紙をビリビリ破って、あたしが書いた紙はグッチャグチャにして投げ捨てた。
ママは真っ白な顔色でガクガク震えて何かをずっと呟いてた。
ジェニファーが、ポイされた紙を拾って読んで、フリーズした。
もうホント訳わからなくて、とりあえず説明してほしいと頼んだ。
書かれていたのは、先月、留学先の学校で自殺した子の名前と、自殺した日付だった。
その子はジェニファーをジェンと呼んでいて、悩みを相談していたという。
「こりゃーもうダメだ。」
「早く電気つけようよ。」
「怖いからみんなでスイッチのとこまで行こうよ。」とか言いながらみんなで壁のスイッチのとこまで移動して、部屋のスイッチオン。
バリーンと音を立ててプチシャンデリアみたいな形の部屋の照明器具が弾け飛んだ。
もう、大絶叫。
みんなで泣きながら後片付けして、テーブルの上に使ったコインを放置して、みんなで固まって寝た。
コインは、早朝帰ったパパが朝食の準備をしてる時には無かったと言ってた。
コインの行方はともかく、あのコックリさんナイトの話は、数十年たった今でも、家族とあたしの中ではタブーになっている。
補足です。
ジェニファーは同級生で、その子から相談を受けてました。
親が進学について非常に厳しく、その期待に応えられずにいた事。
でも、親を愛してるから何とか頑張りたいという事。
ずっと悩んでいて、とうとう耐え切れずに、父親の銃を持ち出して自宅で頭を撃ち抜いて自殺しました。
遺書はなかったそうです。
後悔している事や、ジェニファーに相談していた事とかを親に伝えて欲しかったのかなと思います。