私が中学生の頃です。
その年の夏休みが終わってから、林間学校的な自然教室体験合宿が3泊4日間行われました。
場所は九州のとある山間地です。
宿泊当日は、一学年全員。
一クラスごとにバスに分かれて学校から直接現地に向かいました。
バスの中にはガイドが一人常駐しており、観光案内のような話もありました。
現地宿泊場所は隣県だったので、それほど時間はかかりません。
私はバスに乗りながら自然と眠りについてしまい、どのくらい時間が経ったかは分かりません。
しかし、視界は真っ暗のなかその先の奥に何かが見えました。
それはゆっくりと近づいてきて、次第に辺りが真っ暗な空間のような場所に様変わりしました。
そして接近して見えたものは・・・人の右片腕・・・。
私は状況がよく分からずにただ茫然としていたと記憶しています。
その物体は人の腕であることに変わりありませんが、そこには、全身や人体が全く見えませんでした。
目と鼻の先まで腕が近づくと私は、身動きすらできない状態のなか目を覚ましました。
そこはバスの中・・・。
外の景色は山間地の中心をバスが走っていました。
「現地まであと30分です」とバスガイドさんからアナウンスが告げられました。
周りは山に囲まれています。
私は変な胸騒ぎに襲われました。
これは何か変な感じがするな・・・と。
それはある場所を通りかかった時のことです。
宿泊地から少し離れた場所に古い中ぐらいのダムがありました。
当時私が住んでいた地域や周辺近隣他県で数か月近く雨が降らなかった事もありダムの貯水率が下がり続け貯水池に水がないことがありました。
この宿泊地の近いダムもそうだったかはよく知りません。
貯水池の近くをバスで走行中、かなり古いダムだったせいか古い廃屋のような家の屋根が貯水池の水が減少しているなかで、浮かんでいるのが見えました。
そのダムの向かい側にいくつかの家か何かの資材置き場が見えると、そこに異様な人影が複数・・・。
古い制服のような恰好をした老人と青年男女や子供のような顔をした集団がこの走行中のバスに向かって手を振っているのが見えました。
不思議なのは私以外バスの車内にいた人達に全く反応がなかった事です。
その後、現地に到着してから行事は予定通りに進み最終日の夜の出来事です。
夕方のオリエンテーションが宿泊先のホテルの外で開催されました。
内容は大集団での大型キャンプといったような感じです。
クラスごとのレクレーションが始まりました。
他のクラスが演劇合唱ダンスを披露していたと思います。
内心楽しむという訳でもなくただ見物していました。
その時は山頂に近い場所でもあったせいか次第に風が強く、ビュービューと吹く風はそれほど寒くはありませんでしたが、その隙間から不可解な声が私の耳元に反響しました。
レクレーションの時間が経つにつれて声は次第に大きくなり始めてきます。
複数の声が同時に古い民謡のような音調で「あーあーいーいーまーまーまーいーいーあーあー」と叫ぶように聞こえてくるのですが、周囲の人間は誰も気付いていないような感じでした。
その歌声のような叫びはレクレーションが終わるまで続き、終了の挨拶が終わるのと同時に鳴り止みました。
そのあとは、各自グループに分かれて翌日の朝が最終日ということもあり帰りの準備支度をしながら、就寝。
翌朝、私のいたグループがバスに乗る前のに部屋の最終チェックをすることになりました。
戸締り確認忘れ物がないかそんなところですが、突然、電気を消して部屋を出る際に金縛りに遭い体が動かなくなりました。
「ガチャン」という音が聞こえてきて、後ろを振り返るも顔を動かせません。
確か午前10時くらいだったと思います。
部屋に一台のテレビが設置されておりコンセントは抜かれていましたが、電源が入り画面の映らない雑音が私の視界に映りました。
その瞬間、画面が変わり私がいた部屋と私の姿がテレビに映っていましたが私の背後には、最初にダムの向かい側で見た異様な人影が全員画面の背後に映し出されたのです。
体が一瞬だけ楽になり後ろを振り向くと目の前の集団は一斉に私を覆い尽くしました。
私はその場にうずくまり、そして、何かに追われたかのように、目を覚ますとそこは帰りのバスの車内の中でした・・・。
その間の記憶はありません。
今でもあの体験は何だったのかよく分かりません。