全員、不幸

カテゴリー「心霊・幽霊」

昔、俺が実際に体験した話。
実話なんでオチがないかも知れんが勘弁してくれ。

俺が大学1年になった夏休み、各地の大学に散らばってしまった。
友人たちも地元に戻ってきた。
皆、それぞれ免許をとって、バイクや車で夜中に集まって雑談していた。
夜中の1時を廻った頃、友人の1人が、「近くに心霊スポットがある、行ってみないか?」と言い出した。

その時の構成は車1台(3人乗車)バイク2台(俺、友人B)の5人。
俺はちょっと霊体験みたいなことが過去にあったんで、正直行きたく無かったが、他の皆がノリ気になってるこの状況では一人だけ行かないって訳にはいかない。

俺とBのバイク2台が先導し、後ろをソアラが付いてくるって感じで、心霊スポットになっているトンネルに向かう。

そこは、国道のバイバスから山に向かって分岐があり、そこから進入して行かなければならないのだが、普段全く気が付かないような分岐だ。
道の両脇の草が伸び放題で、一見して道路って感じがしない。
車の連中が、草が車に当るんでわざわざ車から降りて、草を押しのけて分岐を入っていく。

分岐の入り口を過ぎると、一応道路らしい感じになっているのだが、舗装はあちこち凹み、ボロボロで、工事車両が付けたような泥の塊が点々と道路に落ちていた。
もちろん外灯なんか全くなくてライトを消せば真っ暗だ。

車同士のすれ違いは厳しいぐらいの道幅だが、ところどころに舗装されないが、車が避けれるほどのスペースが確保されている。

15分ほど走ると、少し道が広くなり、山の中から開けたような所になった。
その頃になると、目も慣れてきて月灯りでライトの当って無い所も見えるようになってきた。
道の両側の山の斜面を見渡したが、家らしきものは見当たらない、夜中だということで、電灯をつけていないのもあるかも知れないが、家が建ちそうもないような山の斜面が続いている。

道がちょっと広くなってから、5分ほど走った時、一台の車が止まっていた。
こんな時間に何故車が??っと友人Bも思ったらしく、走りなが2人で顔を見合わせて、ハンドサインで「止まれ」の合図をした。

その車に近寄って、バイクを降りると、俺たちと同じぐらいの年代の男が2人降りてきた。
俺たちが口を開く前にその男達が「今からトンネルに行くのか?」と聞いてきた。

「そうなんだけど、君等は行ってきた帰りなのか?」と聞いてみた。

「ああ、そうや、さっきトンネルを抜けて戻ってきたんだけど、車のエンジンの調子が悪くなって動けなくなっちまった、今無線で友人に連絡して助けにきてもらってるんだ」

そりゃ大変だね・・・っと言いながら、俺はすごく悪い予感がしてた

俺:「まさか、トンネルに行ったせいで止まってしまったのかな?」

なんて冗談めいた口調で男達に言ってみた。

「そうかも知れないなぁ・・幽霊とか見れなかったけど、確かに気持ち悪いトンネルだったよ・・・気をつけて行ってきなよ」

判った、と答えながら何に気をつけて良いのか見当も付かない。
とりあえず、車で待機してる3人に状況を説明し、軽くクラクションを鳴らして、先に進んだ。

5分も走らないうちに、問題のトンネルが現れた。
確かに、気持ちが悪いトンネルだ。

ライトを上目にしてトンネル内を照らしてみるが、出口は見えない。
ところどころ水滴が落ちていて、舗装もガタガタになっている。
入り口には「通行注意」という看板が引き抜かれて倒れている。

車の連中も降りてきて、5人でトンネルの前に集まった。

「どうする??」
「どうするったって、ココまで来たら行くしかないだろ」
「そうだな・・・」

俺とBのバイク2台が中に入り、ソアラが後ろから付いてくる。
路面が路面だから、速度はそんなに上げることは出来ない。

トンネルに入ると、バイク2台の排気音がトンネル内にこだまして、うるさい・・・。

次に何かが聞こえてきた・・・・。
高い音・・・。
いや、声だ、女の声が聞こえる・・・。

横のBを見た。

Bも何か聞こえているのか、しきりにキョロキョロして、トンネルの中を見ている。
そうこうしてる間に、トンネルを出てしまった。

車が出てくるの待って、向きを変えてもう一度トンネルに入る。

やはり、声が聞こえる・・。
声といううより、叫びのようだ・・・。

「きゃぁああ」とか「あぁぁっぁぁぁ」

とか言う風に、呻いているような声だ・・・。
トンネルの丁度真ん中辺りで俺は、Bを止めた。

「なぁ、ライトはつけててイイから、エンジン切ってくれないか?」
「ええ??・・・判った、ライトは点けてていいんだな」

俺はバイクを降りて、後ろの車にもエンジン切ってカーステを止めてくれと伝えた。
全てのエンジンの排気音が消えた。
しかし・・やはり俺の耳には女の呻き声が聞こえてくる。

俺:「もういいよ、行こう」

真っ先にエンジンをかけて、走りだした。
トンネルを出たところで、バイクを降りてBを待った。

Bが出て来て、俺に言った。

B:「さっき、トンネルの中で女の声がしてたよね・・」
俺:「やっぱり、お前にも聞こえたのか?」

B:「うん、最初はさぁ、マフラーの音がやかましくて共鳴してるのかな?と思ってたけど、**がエンジン切ってと言ったでしょう、あの時にはっきり判った、女の声だって・・」

車の連中に「女の声が聞こえたか?」と聞いたが、3人ともなにも聞こえなかったと言う。

「またまた~、ビビらそうとしてるんだろ~」とか、言ってやがるし・・。

時計はすでに2時を過ぎていた

俺:「そろそろ帰るか」

トンネルから離れていった。
2人組の車も既に無くなっていて、無事に帰ったんだな・・・と思いながら走ってた。

するとバイパスとの分岐を出て初めての信号がある場所で、いきなり後方から叫び声が聞こえた。

「うわぁああああああ」

と叫びながら、ホントに転がり出るようにソアラから3人が出てきた。

俺:「どうしたんだよ、落ち着けよ」

俺の言葉に、3人とも答えることが出来ない。
しかたないので、俺が車を動かして脇に寄せた。

自販機があるところまで3人を連れて行き、缶コーヒーを手渡して落ち着かせようとした。

俺:「一体、どうしたんだよ、何があった?」
3人:「車の中に・・・ナニかいた・・」

トンネルから帰り始めて、直ぐに車内に変化があったらしい。
始めは小さな音がし始めた。
ルームランプの真下辺り、パチンっていう音だったらしい。

「誰が鳴らしてんだよ?」
「俺じゃねーよ」
「俺でもないよ」

とか、やってる内にも、どんどん音が大きくなり、ルームランプの真下だけじゃなく、足元やバックドアの辺り、いろんなところから音が鳴り出してきて、パチンという音が、ドンドンという叩くような音に変わってきて、最後は窓を叩くような音になってきた。

3人はどうすることも出来ず、運転しているヤツはひたすらでかい道に出るまで我慢していたらしい。
後ろに乗ってたヤツは、車が止まる直前には、はっきり窓を叩く”手”が見えたそうだ。

3人は口々に、「もうその車には乗りたくない」と言っている。

2人は、俺とBのバイクの後ろに乗せて帰ることが出来るが、車の持ち主は、どうしようもない。
なんとか、説得したが嫌だ嫌だといっている。
しかたがないので、結局日が上るまで5人で自販機の前でずっといる事になってしまった。

そして、この事があってから2日後。
車に乗っていたうちの一人のTは、彼女が運転する車の助手席に乗っていた。
眠くなったTは、シートを倒して、居眠りをしていたらしい。
そして、彼女も寝てしまい、大型トラックに突っ込んだ・・・。

彼女はシートベルトをしていた為に、軽症ですんだが、Tはシートを倒していたが為にぶつかったショックで、足元に滑り込むように強打し、両足複雑骨折で3ヶ月入院した。

同じく、車に乗っていたYは、トンネルに行った日の4日後、Tの見舞いに行った帰りに交差点で右折してきた車に横から突っ込まれ、右手、右足骨折で1ヶ月入院。

車を運転していたKとBは無事で、怪我などはしなかった。

俺は、Tとkを見舞いに行き、地元から大学に戻った週末に、バイクで大事故を起こし、4ヶ月の入院となってしまった。

トンネルに行った日から10日以内に5人中3人が入院してしまったが、これがトンネルに行ったせいなのかどうなのかは、わからない。

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