私はある地方の大学に通っていたのですが、実家からは電車の便が悪く、下宿をしていました。
しかし実家と大学の直線距離は意外と近く(といっても100kmぐらい)。
当時の彼氏(高校時代の友人だった)は車で毎週末私の家まで遊びに来ていました。
それはM県とN県の県境で起こりました。
県境には「出る」と大学の先輩たちの間でも有名な○山トンネルがあります。
よくある「車の上に女の人が乗っていた」等々のうわさには事欠かない場所です。
私は初めて彼とその場所を通ったとき、車内で「ここには出るんだよ、霊が出るんだよ~!!!」と大騒ぎをして、彼を恐がらせようとしたのですが、真昼間だったこともあり、彼は「あほか」と相手にはしてくれませんでした。
しかし、そのトンネルを抜けたときです。
舗装工事をしていた道で片側通行だったため、いったん停車したのですが、突然車内でかかっていたドリカムの歌声が止まりました。
私は停車のため、彼がエンジンを止めたのだと思っていたのですが、車内にイヤな沈黙が流れたため、「なんで?なんでエンジン止めるん?」と彼に聞いたのです。
彼:「・・・止めてない。勝手に今エンストした」
彼はなんだか呆然としているように見えました。
その後です。
私たちはM県側からN県に向かって走っていたのですが、道中、信号にひっかかるたびに車がエンストを起すのです。
車はオートマ、そして、いままで一度事故歴もなく、突然のエンストなどは今の今まで起したことがないのにもかかわらずです。
信号に引っかかるたび、私たちはどんどん泣きそうになるほど恐ろしくなってきました。
あのトンネルで何かを乗せてしまったのではないかと・・・。
しかし、私たちは二人でいたこともあり、彼は車通りの少なくなった道でいったん車を止めて「ボンネットを開けてみよう」と言いました。
彼:「もしかしたら、俺でもわかる故障かもしれんし」
彼が自分に言い聞かせるように言ったのを覚えています。
そして、彼はいったん左にウィンカーを出し道の左側に車を止めました。
そしてウィンカーをハザードに変え、ボンネットを開けに車を出ました。
しかし、すぐに車内に戻ってきて「なんにも変わったとこない。っつーか俺にはわからん」と言って、車を発信させました。
しばらく走って、私はおかしいことに気づきました。
私:「なんでハザード出したまんまなん?」
彼:「え?さっき車出すとき止めたで?」
何気に彼はもう一度ハザードのボタンを押しました。
しかしチッカチッカとハザードは点滅し続けています。ハザードが止まらないのです。
「うわー!」と、彼は堪らなくなったように大声で叫びました。
そのとたん、ハザードはバチっと止まり、今度は左へのウィンカーが点滅し始めました。
私は確かに彼の手元を見ていたのですが、ウィンカーを操作した様子はありません。
真昼間の田舎道で私たちは凍りつきました。
車を止めなければ・・・。
私たちはもう、何に祈っていいのかもよくわからないまま、「ごめんなさい、ごめんなさい、もうヘンなことは言いません!」と車内で大声で叫びました。
そのとたん、ウィンカーは、付きだした時と同様、突然止まりました。
その後、N県に着くまで、車は一度もエンストしませんでした。
そして、もう二度と。
しかし、話は続きます。
私たちは合計で4年間付き合っていたのですが、その件があってから、そのトンネルを避けるルートで行き来するようになりました。
しかし、その「避けるためのルート」は、雪などのために、よく通行止めになる道だったため、4年の間には何度かそのトンネルを通らなければならないことがありました。
そのトンネルを通ったときに限って、私の家(一人暮らしの下宿です)のテレビが突然消えるのです。
バチっという音とともに・・・。
そして二人でいるときに限って・・・。
親とそのトンネルを通ったときにはなにも起こりません。
そして、彼と別れた今も、そのテレビは現役で私の部屋で活躍していますが、突然電源が落ちて消えるようなことは一度もありません。
私が今まで生きてきた中で、唯一の「ほんのり恐い」体験。
以上です。
何も見たわけではないし、音も聞いていません。
ただ、それだけに、なんらかの悪意をすごく感じて怖かったです。