乗っていた人は生きていない

俺が広島にあるF級DQN大学の学生だった頃の体験談です。

当時の俺は入っていた体育局系クラブを途中で辞めたものの、そのクラブの部員である同期生や後輩たちなどと麻雀ばかりしている馬鹿者でした。

十一月になった頃だったと思います。
友人の部屋でいつものように麻雀をしていると、後輩がやってきて「○○○(某コンビニ)の前で、すごい事故やっとりますよ」と教えてくれたんです。
すでに四時間くらい麻雀をしていた我々は、休憩がてら事故現場の野次馬に行くことにしました。

現場に着くと、すでに事故の被害者は救急車で運ばれた後でしたが、ただごとで済んでいないことは明白でした。

単独事故のようでしたが、車のボンネットが潰れて、運転席・助手席も圧縮されたように潰れていたこともありましたが、それより現場に漂う臭いです。
血と糞とゲロが混じった臭いが現場に漂っていました。
その臭いのせいか俺は、「車に乗っていた人は生きていないだろう」と直感的に思いました。

さて、現場に着いた我々はしばらく事故処理を眺めていましたが、その日はとても寒かったし腹もすいてきたので、事故現場の真ん前にあるコンビニに入り、暖かいコーヒーや夜食を買って部屋まで帰ることにしました。

前置きが長くてすいません。
問題はここからです。

コンビニに入るとすぐに、通路に座り込んでいる女性いました。

『ん?何じゃ?へんな所に座りゃーがって。邪魔じゃ!』と、ちょっとムカついた俺は、女性の顔に視線を向けたんですが、次の瞬間「!!!!!!!!!!!!!!!!!」な状態に。
なぜならその女性の顔ときたら、まるでボクサーにでも殴られまくったように顔中青あざ・赤あざだらけで腫上り、口は半開き、床にペタンと力無く座って、ぼーっとした表情で虚空の一点を見つめているという状態でした。

ひどい怪我人だと思いましたが、当時の俺は冷たいもので、『もし事故の被害者でなくても、これだけの怪我をしているんだから、表にいる警察がなんとかするだろう。それにコンビニ側の人間も、こんな怪我人が座り込んでいたら商売の邪魔だからなんとかするさ』と放置することにして、そそくさと店の奥に進みました。

そして、コンビニの一番奥にあった雑誌コーナーで立ち読みをしばらくしていましたが、さっきの女性が気になり、その女性が座り込んでいたところを見ると、女性はいなくなっていました。

『あー、警察か店の人が病院に連れて行ったのかな?それなら良かった』と安心し、さっさと帰って麻雀の続きがしたかったので、仲間がどこにいるか店内を見回しました。

ところがです。
あの女性が店内にいるのです。
そればかりか、あの酷い状態なのに店の中を飛び跳ねながら移動しているのです。
首には力が入らないのか、飛び上がったり着地するたびに頭が前後左右に揺れています。
表情は相変わらず呆けたような感じで、視線は上目を向いたままです。

小柄な女性なのか、その女性が飛び跳ねながら商品棚の向こう側に行くと、着地した時は姿が棚で完全に隠れるものの、飛び上がった時は顎から上が棚の上に現れて、不気味さえも醸し出しているような状態でした。

その女性が怖いというより痛ましさを感じた俺は、その場にいるのが辛くなってしまったので、さっさとコーヒーを買って店を出ることにしました。

コーヒーを持ってレジまで行くと、店員はもう一人の店員と「明日は、あのパチンコ屋のあの台に座ろう」とか馬鹿話をしています。
俺は、女性を放置した自分のことは棚に上げて、『お前らは店員じゃろーが!変な客がおるんじゃけん何とかせーや!』とも思いましたが、何も言わず清算を済まして、あの女性を横目にしながら店を出て、外で仲間を待つことにしました。

外に出てコーヒーを飲みながら待っていると後輩Aが出てきたので、先ほどの女性のことについて話しかけると、「そんなの見んかったですよ。そがあな女がおりましたか?」とか言いやがります。
続いて出てきた後輩Bは「見ましたよ。気色悪かったですね」と、その女性がいたことを肯定したのですが、後輩Aは「店に入ったときからそんな女はいない」と言い張ります。

その次に同期生のCとDが出てきたので、そいつらにも「変な女」がいたかどうか聞いてみると、Cは「そんな女はいなかった」、Dは「そういえば女の人が座っていたかなあ」といいます。

その女がいたかどうかで意見が割れたところで、その店の前に俺のパチスロ仲間がやってきたので、俺はそいつに、店の中に顔をボコボコに腫らした女がいるかどうか確かめてきてもらうことにし、パチスロ仲間は店に入っていきました。

そして出てきたそいつにいたかどうか確かめると、「居なかったよ。ひょっとしたらもう店を出たんじゃないんか」との返事。

でも少なくとも俺が店を出てからそれまでの間に、例の女性は店の外に出ていないのは事実です。
はっきりと目撃した俺と後輩Bは「?」「どういうこと?」と顔を見合わせました。

よくよく考えてみたらおかしな話です。

あれほど顔が腫上った女性がいて、しかも気が狂ったような行動をしているのに、店員も店のすぐ外いる警官も放置している。
目撃しなかった同期生Cと後輩Aはともかく、他のお客さんも別に変わったそぶりをみせていなかったことに気づきました。

その様な女性がいたら、普通、まわりの何人かはその女性を助けるか眺めるか、眺めるほどでなくてもチロチロ見るはずです。
でもそんなそぶりを誰もしていなかったことに俺と後輩Bは気づいたのです。

気味が悪くなった俺たちは、さっさと部屋に帰ることにしました。
友人の部屋に帰るとすぐに、何故か俺は急な高熱を起こし寝込んでしまいました。

あの女性がいったい何者でどうして店にいたのかわかりません。
ひょっとしたら通りすがりの怪我人だったのかもしれません。
俺が熱を出して寝たのは偶然だったのでしょう。

ただ後日噂で聞きましたが、その交通事故で女性が亡くなったことと、その現場付近では割と見通しがいい直線にもかかわらず交通事故が多発していること、その近辺で飛び降り自殺が何回かあったこと、は忘れられません。

それがもしデマであろうとなかろうと。

それからというもの交通事故現場を興味本位で見に行くのは止めてしまいました。

もしその事故で本当に人が亡くなられているのなら、心からご冥福をお祈りします。

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