2、3週間前の話。
幼馴染みであるKが春休みということで、東京から地元に帰ってきていたので久しぶりに会うことになった。
まぁカラオケに行ったりボーリングしたりと、定番の遊びをしながら最近の出来事や恋の話や大学の話などで盛り上がっていた時、ふと昔の小学生の頃の話になった。
K「あの頃はほんとガキだったよねぇ。当たり前だけど(笑)」
私「毎日のようにN公園に遊びに行ってたもんね。」
K「確かに~!!何がそんなに楽しかったんやろ?」
私「謎だよねぇ(笑)そーいえば、あの頃誰が流した噂かわかんないけど、あの公園、元は墓地だったとかゆー噂があったよね。ほんとかどうか知らないけど。」(この噂は親に聞いても知らないらしいのでガセかもしれませんが、すぐ隣りというか裏にお墓とお寺があります。ちなみにそのN公園は私たちの家から歩いて1分もかからないくらいの近所にあります。)
K「あったねー!!それでT(近所の女先輩)たちがおもしろがって、砂場の角4ヵ所にろうそく立てたことあったよね。」
私「あったあった!!最初はみんな冗談でやってたんだけど、その時誰かが『風吹いてないのにろうそくが倒れてる!!』って叫んでさ。」
K「あんなの風が吹かなくてもバランス崩して倒れただけだろうにね(笑)そんでみんなで怖くなって滑り台に登ったんだけど、『足引っ張られた!!』って誰かがゆーもんだから、本気で怖くなって猛ダッシュでTんちに駆け込んだんだよね(笑)」
私「そうそう(笑)あんなの絶対T達のやらせだったんだろうけど、うちらめちゃ怖がってたよねー。」
K「今思い出すとほんと笑える(笑)」
私「うちらもアホだよね(笑)でもあの時男の子一人置いてきちゃったよねー。」
K「男の子?」
私「ほら、うちらが遊びに行くと必ずっていっていいほど、いつも男の子が一人で公園にいたじゃん!!あの時もいたんだけど、うちらのことただ見てるだけで全然怖がってなくてさ。」
K「えー?そんな子覚えてないよぉ。ってゆーか男の子なんていなかったし。」
私「いたって!!いつも一人でいるからたまにうちらと遊んでたじゃん。」
K「そーだっけ?」
私「そーだよ。でもあの時はなんで一緒に逃げなかったのか不思議だったなぁ。一人で置いてきたことに罪悪感みたいなのもあったし。」
K「何それ、幽霊でも見たんじゃないの?(笑)」
私「違うよ!!だって次の日もちゃんといてKも一緒に遊んだよ。」
K「思い出せないー。」
私「まぁ、だいぶ昔のことやし。うちらもいつの間にか公園に遊びに行かなくなったもんね。」
K「だよねー。ってゆーかさぁ、こないだ~・・・」と、話は逸れて違う話題へ。
Kが覚えていないことに昔のことだからと、この時はあまり気にしてませんでした。
そしてKが東京に戻り、2、3日が経ったある日のバイトの帰り道。
時間は20時すぎでそれほど夜というわけでもなく、車も人もすれ違う時間帯。
N公園は私の家の北側にあり、バイトに行くにも学校に行くにも南側の道路を使うため、滅多にN公園を通ることはありません。
その日もいつもと同じように南側の道路でバイトに行き、帰りも南側で帰っていたのですが、考え事をしていたのか、気付いたら家に着く一本前の道路を曲がり、N公園がある道に進んでいました。
私「あれ、なんでこっちの道に来た?・・・まぁいっか」
それほど遠回りになるわけでもなかったので、気にせずそのまま進み帰ることにしたのです。
少し進むとあのN公園が見えてきました。
今まではそれほど気にしていなかったのですが、小さい公園だからか街灯もなく、桜の木が生い茂っているため薄暗く感じます。
そしてこないだKと公園の話をしたばかりだったため、なんとなく嫌な雰囲気があるようにも思えました。
なんか嫌だなぁ・・・早く帰ろう。
そう思いながらも目線は公園に向いていました。
ん・・・?
近付くにつれ、公園全体が見える距離になった時、砂場に小さな人影が見えました。
え、子ども?こんな時間に?
すぐ隣りには何軒も民家があるので、その家の子なのかなと思いながら公園の真正面を通り過ぎようとした時、その子が私の気配に気付いたのか顔を上げ、私と目が合いにっこりと笑いました。
えっ!!!!!!!!
その時のなんとも言えない寒気?みたいなものを今でもはっきりと覚えています。
だって、その子は私が小学生の頃に遊んでた、いつも公園に一人でいた男の子だったから・・・。
考えるまでもなく、あの頃から10年くらい経ってるのに、記憶の中の男の子が目の前にいるなんて!!!
目が合った瞬間に考えるよりも先に『ヤバい!!』と反応して、頭では何が起きているのか理解出来ていなかったのですが、身体は自然と自転車をこぐスピードが速まってました。
すると、その男の子は私のことを覚えていたのか、スコップを持ちながらあの笑顔のままでこっちに走ってきます。
もう何がなんだかわからないまま、一気に恐怖心が沸き上がり猛ダッシュで家に向かいました。
後ろからは微かに『タッタッタッタッ・・・』と男の子が駆け寄って来る足音がしていました。
しかし私が家に着く頃、急に足音が『ダッダッダッ』と激しくなり、もちろん怖くて振り返ることも出来ずにそのまま家に逃げ込みました。
そしてすぐさま鍵をかけてそのまま玄関に座り込み、破裂しそうなくらい鼓動が激しい中、なんとか息を殺して身を潜めていました。
足音がした位置からいって家の近くには来たかもしれないけど、それ以上近付いて来る音はせず、数秒たっても辺りわ『シーン・・・』と静まり返っています。
ほってした瞬間、何かの見間違いとかだろうと思ったのですが、そんなのも束の間、何か違和感を感じました。
家の中がやけに静かなのです。
というか、部屋の電気も玄関の電気すら付いていないことにその時気付きました。
誰もいないの?なんで?
帰宅したのは20時半頃。
妹は中学生なのでこの時間にはとっくに帰って来ているはずだし・・・お母さんもいない。
親はたまに遅くまで仕事の時もあるのですが、妹がこの時間にいないのは有り得ない・・・。
そんなことを考えてる間に数分過ぎたでしょうか。
自分がまだ玄関に座ったままなことに気付いて、さっきあんなことがあったから怖くて急いで自分の部屋に行こうと立ち上がり、階段を登ろうとした瞬間・・・腰が抜けるかと思いました。
私の家の玄関のドアはすり硝子(というんですか?半透明でぼやけたような硝子)になってるんです。
その玄関のすぐ外に、さっきの男の子が立っているのが見えました。
足音がしなかったのは今までずっとドアを挟んですぐ後ろにいたから・・・!?
私が玄関に座り込んでいる間もずっと・・・??
恐怖で動けないと思っていた身体も考えるより先に動いてくれ、階段を掛け上がり自分の部屋に飛び込みました。
身体がマンガやドラマのようにブルブルと震え、窓やカーテンをしっかり閉めて泣きながら友達に電話しました。
「お客様がお掛けになった電話は、現在、電波の届かない・・・」
私「なんでっ!?!?」
何度掛けても声は変わらない。
違う子に掛けても同じ声が流れたり留守電だったり・・・。
ただ携帯が繋がらなかっただけなのに、その時は本当に怖くて一人でパニックになってて。
ふとお母さんが帰って来ていないことを思い出して電話してみた。
繋がりはしたがなかなか出ない。
しばらくすると留守電に切り替わった。
私「お母さん、今どこにおるの?まだ仕事?もう怖くておかしくなりそうなんだけど・・・R(妹)もまだ帰ってないみたいで家誰もおらんし・・・お願いだから早く帰ってきて!!」というような内容を留守電に入れて電話を切った。
しばらく、といっても10分程度だと思うが、静寂の恐怖の中、一人で泣きながら耐えていると家のチャイムが鳴った。
私「えっ・・・」
また少し鼓動が速くなった。だって、私の部屋は普段からチャイムが鳴っても聞こえないはず。
チャイムの音が聞こえるのは電話がある隣りのお母さんたちの部屋と1階のリビングだけ。
なのにしっかりと自分の部屋にいても聞こえた・・・。
数秒空いてまたチャイムが鳴る。
誰か来たのかも・・・。
そう思い、静かに部屋のドアを開け、階段を2段くらい降りた所で耳を澄ませてみた。
「はぁ??なんで鍵閉まっとんの!!」
外からは間違いなくR(妹)の声が聞こえてきた。
さっき私が家に飛び込んだ時に鍵を閉めたから入れないのだろう。
そしてR(妹)の声を聞いた瞬間、安心感からかまた泣きそうになりながら階段を降りようとした時。
『ガタガタッ』
!!!!!!!?!?
誰もいないはずの1階から椅子を引く音がした。
階段を半分くらいまで降りていた私はそこから1階のドアを覗いてみた。
・・・明かりが付いてる。
帰った時は家は真っ暗で誰もいなかったはず。
じゃあ今1階にいるのは・・・?
また恐怖心が私を襲い、そのせいでバランスを崩して階段を踏み外しそうになってダンッと足音を立ててしまった。
しまった・・・!!
足音を聞いて1階にいる誰かがゆっくりとリビングのドアを開ける・・・。
R「お姉ちゃん!!なんだ、いたの?」
私「えっ・・・!?なんでRがいんの?」
R「なんでって、ずっといたけど。」
私「だって・・・家ん中真っ暗だったじゃん!!」
R「あぁ。うちさっきまで(1階の)こたつで寝てたからさ(笑)ってゆーかどうしたの?何泣いてんの!?」
もうそこで緊張の糸が切れて大泣き。
いや待て、じゃあさっきチャイム鳴らしたのは誰・・・。
玄関の方を見るとチラっとだけ小さな人影が見えた気がした。
怖くなって階段を全部降りてRのそばに行こうとして、何気なしに玄関の床に視線を落とした。
私「えっ・・・」
R「何?今度はどうしたん?」
玄関の床には男の子が持っていたような玩具のスコップが転がっていた。
R「何これ、スコップ?なんでこんなのがあるの?」
そう言って拾おうとしたRの手を思い切りはたいて止めた。
R「痛っ!!何すんの!!」
私「ちょっ・・・いいからこっち来て・・・」
今まで家族の前で滅多に泣かなかった私に何かあったんだと察してくれたのだろう。
それ以上は何も言わないでただ黙ってリビングまで付き添ってくれ、お茶を出して落ち着かせてくれました。
それからは恐怖で何もしゃべることが出来ず・・・というか自分でも理解出来ていなかったのでその時は上手く話すことが出来なかったので、Rもしつこく聞いてくることはなく、ただ無言の中お母さんの帰りを待ちました。
しばらくすると車のエンジン音が聞こえ、お母さんが帰ってきたんだと思ったけど、さっきのRの声だけど、Rじゃなかったということもあったので、その場でじっと待ちました。
すると車のドアの音が聞こえ、ガチャガチャと玄関の鍵を開ける音が聞こえて本物のお母さんなんだと思い、玄関に走りました。
母「何これー!!」
急にお母さんが叫んでビックリしました。
玄関に行ってみると、さっきスコップが転がっていた場所らへんに、砂場の砂っぽいサラサラした白い砂が10cmくらいの山盛りになっていたのです。
それを見た瞬間、また恐怖が沸き上がりお母さんに飛び付いて大泣きしてしまいました。
少しして落ち着いてから、幼馴染みのKと話したことから今まであったことを全部話し、次の日にN公園の裏にあるお寺に御祓いしに行くということでその日は終わりました。
しかし、恥ずかしいことながら恐怖はずっと続き、この年になってもその日は親と一緒に寝ました・・・。
次の日、そのお寺に行ったのですが、御祓いは出来ないと断られ(なんでだっ)、その代わりに塩を撒いて~など清めるように言われました。
ちなみにそのお寺に行くにはN公園の横を通るのですが、砂場を見た時、あのスコップが転がっていました・・・。
今思うと小学生の頃、確かにあの男の子はいつも公園にいたのですが、友達は誰一人としてあの男の子としゃべっていなかったように思えます。
それに一緒に遊んだと言っても、「遊ぼう」と誘うんではなくて、気付いたら男の子が近くにいてあの笑顔でニコニコとしていただけのような気も・・・。
もしかしたらあの頃から見えていたのは私一人だけだったのかもしれません。
後日談ですが、私がお母さんの携帯に入れたはずの留守電はなく、電話なんてかかってきていないと言っていました。
そしてあの日からN公園には近付かなくなり、何事もなく過ごしています。
ただ時々、ふとした時に後ろから『タッタッタッタッ』と音が聞こえるような気がするんですけど、きっと気のせいですよね・・・。