いつものように僕はエギ(和製イカ釣り専用ルアー)を持ってK堤防の先端に行った。
タックルをセットしているときに、堤防には一人だけ居たので、まずは、挨拶がてらに「こんばんはー、釣れてます?」と話しかけたところ、かなり驚いたようで、「うぉ!?なんだ、また出たのかと思ったよ」と返事が返ってきた。
「えっ、なんですか?」とまた聞いたところ・・「ここは心霊スポットでな・・実は一昨日も出たんだよ。仲間がエギでイカを狙ってたら、なんか変な気配感じて振り向くと呉服着た女が無言で迫って来て、びびった拍子に海に落っこったんだよ。海から堤防を見上げると笑みを浮かべた女が立っていて身体がスケていたらしい・・・」
僕:「えぇ!マジっすか?」
釣り人:「他にもいろいろ聞いてるんだよ、噂だと少人数になるとやばいみたいなんだ。さっきまで5,6人来てたんだけど帰っちまった。やるんなら一緒に釣ろうよ・・・て、・・え?」
男は一瞬表情がこわ張った。
「いやー、そんな話を聞いたらちょっと・・場所変えますわ。」
ビビって引き返そうとすると、「ちょ、ちょっと待ってくれ、俺も帰る!」と、男はもの凄い力で、僕の腕をつかんだ。
仕方なく男の釣り道具の片づけを手伝い一緒に帰った。
駐車場近くまで戻ってくると、男は安心したかのように話し出した。
釣り人:「さっきはとっさのことで言えなかったけど、君が帰ろうとしたとき、君の後ろのゴミカゴ横から女がこっち睨んでたんだよ・・」
僕:「え?でも片づけてる最中とか気がつかなかったけど・・」
釣り人:「ほんとに?君は霊感ゼロなのかなぁ、いや俺に霊感があったのか・・・」
・・などと話してたら別の釣り人とすれ違った。
どうやら例のポイントに向かうらしい。
幽霊が出るなどと注意しても変な目で見られるのがオチなので無視した。
駐車場について男と別れ車に釣り道具積み込んでいると、「うわぁあぁああああああ!....バシャッ!」、悲鳴と、微かだがいかにも落水しましたよって水音が・・・。
さっきの釣り人だろうけど、ライフジャケット着けてたし、死ぬことはなかろうと思い放置。
それよりもさっきの男の話は本当だったのかと納得したところで次のポイントに向け車を走らせた。