愛犬の最後の別れ

俺が大学生だった二十年前の話。

かわいがっていた犬(ミニチュアシュナウツァー)が死んだ。
帰宅すると廊下を爪の音をかつかつ鳴らしながら駆け寄ってきて飛びついてくる、かわいい奴だった。
わずか五歳、急性白血病で発病から五日と経たずに逝ってしまった。
俺、妹、母、祖父母、隣に住んでた叔父叔母、従妹二人はおおいに悲しんだ(父は鬼籍)。

発病したその日、俺と妹は厄年が近かったため、北関東の某厄除け大師に厄除け祈願に行っていた。
発病が露見したのはその帰宅直後のこと。

出かける前はわんわん喚きながら走り回って「うるせえな」と思ったほど元気だったのに、帰ったらなぜかぐったりしていた。
その後は実にあっけなかった。

きっとあの子が俺たちの厄を引き受けてくれたのだろうと、哀しみながらも「ありがとう、ありがとう」とその亡骸を撫でた。

その日のうちに叔父貴がペット葬儀の予約を取り付けてくれ、翌日には荼毘に付すことになった。

そして荼毘に付すその当日。
俺たち家族は全員揃って家のリビングで朝食を摂っていた。

すると、リビングの扉を「どんどん」と叩く音。
みんなはっと扉を見る。

死んだ愛犬はリビングから閉め出されたりすると、前足で扉をどんどん叩くのが常だった。
その時したのは、まさにその音。

祖父:「○○(愛犬)が帰ってきた!早く開けてやれ!」

咄嗟に祖父が指示。
それに従って母が扉を開けた。
開けた先には何もいなかったけど、それからは家族全員で無言、涙涙の朝食だった。

それからは無事、愛犬を荼毘に付し、仏壇に骨壺を供えてお線香をあげた後、庭の片隅に遺灰を埋めた。
今でも実家に帰るたびに線香をあげて手を合わせている。

そんなことがあって以来、「幽霊なんているわけねえ。見たなんていう奴はキチガイだ」と言っていた爺さんが「もしかしたら、あるのかもなぁ」と心変わりした。

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