その女の子が見せたモノ

カテゴリー「心霊・幽霊」

十年以上前になるけど、夏になると今もふと思い出してしまう。
ちょっとぞわっとした話。

当時自分が住んでたのは、山すそのぶどう畑と林に囲まれた、某企業の広大な敷地を縫うように、工場の施設や社宅が点在する田舎町だった。
隣市に続くバイパス沿いまで行かないと大型のスーパーもなく、潰れかけた個人商店が数軒あるだけで、コンビニに行くにも自転車で10分はかかるという過疎地。

その日、たまたま猫のエサを切らしてしまい、真夏の炎天下に自転車なんて漕ぎたくなかったけど、可愛いにゃんこたちのためならば仕方がないと買い物に出掛けた。

昼でも薄暗いうっそうと茂った松林を抜けて、普段はめったに行かない旧道沿いのホームセンターを目指した。

夏休み前の平日の午後、セミの大合唱がうわんうわんと降り注ぐだけで、通りには通行人の姿もなく、たまに車が行き交う程度だった。

お店に着いて自転車を停め、流れる汗を拭き拭き入り口に向かった。
歩きながらふと顔を上げると、ホームセンターのエントランスの真ん前に子どもがぽつんと立っていた。

膝丈の白いワンピースを着た、小学校3~4年生くらいの女の子。
ランドセルも背負ってないし、今日は終業式か何かで早く学校が終わって、親と買い物にでも来たんだろうと思った。

ところが女の子は店内に入ることも、駐車場の車に向かう素振りもなく、その場に立ったままじーっとこちらを見ている。

入り口に向かって歩く自分を追うように、視線だけを動かして見てるって感じ。
その様子に自分はちょっと違和感を覚えた。

一瞬迷子か?と思ったけど店はすぐ目の前だし、狭い駐車場には車が数台停めてあるだけだし、駐輪場には自分の自転車のみという閑散振り。
親と行き違いになるほど大きな店でもない。

どうしたの?と声を掛けようか迷いながら近づくと、女の子が自分に向かって「にこっ」と笑顔を見せた。

そしておもむろに(ねえ見て)って感じで、自分のワンピースの胸元を指差した。
そこには大きなブローチが付いてた。

ああ、なるほど!
これを自慢したかったのか~、と微笑ましい気持ちになった次の瞬間、思わず悲鳴を上げそうになった。

ブローチだと思ったのは手のひらサイズはあろうかという、でっかいカミキリ虫だった。
その虫を白いワンピースの胸元にくっつけたまま、女の子は無言でにこにこと笑いかけてくる。

もちろん自分はダッシュで店内に逃げ込んだ。

虫嫌いってのもあったけど、黙ったまま笑い続ける女の子の異様な雰囲気と、それまでうるさいくらいに鳴いてたはずのセミの声がピタリと止んで、周囲に人の気配がまったくしなくなった無音の状態に気がついて、一目散に店内に駆け込んだ。

レジにいたおばちゃんに怪訝な目で見られたのは恥ずかしかったけど、気持ちを落ち着かせようと歩き回った店内には、お年寄りが数人いただけで、女の子の親らしき年齢のお客さんはひとりもいなかった。

もちろん自分と入れ違いに、買い物を終えて店を出た人もいない。
つけ加えれば、ホームセンターまでの道のりで、行きも帰りも下校する小学生の姿を見ていない。

旦那と義母に昼間の出来事を話すと「あー・・・」という、意味深な反応。

ホームセンターのすぐ近くで一家が惨殺された事件が数年前にあって、その被害者に当時小学生だった女の子が含まれていたという話を聞いたのは、その日の夜のこと。

あの女の子の正体は今も分からないままだけど、それから半年後に町を引っ越すまで、自分は二度とそのホームセンターには近寄らなかった。

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