高1の時の話。
当時、部活に入るよう先生に催促されて俺はいやいやながらもアーチェリー部に入った。
いやいや入ったものの、筋トレできちんと鍛えられたし、何より初めて矢を射った時は本当に気持ちよかった。
矢を射ることを始めてから半月ほど経った頃。
アーチェリーってのはそれぞれ距離があったんだが、俺は50mの距離で矢を射る練習をしていた。
今日は調子悪いなーと思いながらも3本目の矢を弓に取り付ける。
そして弓を的に向けようと思ったその時、違和感に気付いた。
俺の学校のアーチェリー場はそれなりに広い敷地を柵の役割を果たしている茂みで2等分したようになっている。
そこの茂みの影に誰かいるように見える。
アーチェリーってのは普通、人が前にいる時に弓を引いてはダメなルール。
だから人がいるならみんな弓を引くのを止めるかと思ったが、部員は誰一人としてやめようとしない。
俺が考えすぎなのかな?と思って弓を引くことにした。
弓にはサイトっていうものがついてる。
これで矢を射るところを調整できる。(ライフルスコープみたいなものと思ってくれ)
弓を引き、サイトを見て狙いをすまそうとしたその瞬間、サイトの中に人が見えた。
やっぱ気のせいじゃないのか!
俺はびっくりして弓を下げて隣で射ってる同級生に聞いた。
俺:「なあ、あのさ、前に誰かいねえ?危ないだろ」
同級生:「はぁ?頭大丈夫?そんなこと言ってないで真面目にうてよ」
元々俺が馬鹿キャラなこともあってかスルーされた。
前を見てもやっぱ人がいる。
でも矢には当たってない。
まあ、あれが何かだったとしてもみんな射ってるし大丈夫か・・・。
そう自分に言い聞かせて再び弓を構える。
でも、的を見たとき俺は泣きたくなったよ。
人?みたいなものがありえない動きをして凄いスピードでこっちに来るもの。
いつだったか動画で見たゲームのバグみたいなありえない関節の曲がり方でありえないほど奇妙な走りで。
でも誰も気付いてない。
見えてるのは俺だけ?
そう考えてるうちに目の前に・・・。
それはお婆さんだったと判明した。
血走った目でこっちを見つめてくる。
ただ、見つめてくるだけ。
しゃべりもせず、危害も加えず。
他の人たちはすでに矢を全部うち終わっており、あとは俺だけを待っている。
これは無理だと思い全部の矢を射るのを断念。
他の人に「上手くいかんからやめるわww」と言って弓を置いて一緒に矢を取りに行く。
的まで走ってる時にまたありえない動きでついてくる婆さん。
もちろん血走った目で見たまま、横にピッタリとくっついて。
焦る俺。
なんなんだよ、このババア、なんなんだよ。
すると、足がもつれて転んだ。
同級生や先輩に心配されつつ起き上がり、周りを見渡すともうあのお婆さんはいなかった。
???となっているうちに同級生が俺の矢を持ってきてくれた。
結局、そこからは何も違和感なし。
それどころか、その日のその時を境に俺は急にアーチェリーの点数が上がった。
あのお婆さんの存在は、結局今も分からない。
でも幸運を呼んでくれたのかなと少し思う。